2019.05.14 キャリア教育 第4回 成功を考える時代はおわる。これまでも、これからも変わらない教育の在り方とは

岡山県倉敷市の学校法人ノートルダム清心学園 清心中学校・清心女子高等学校。社会が激変する中で、130年以上引き継がれている精神と新しいことに挑み続ける教員と生徒。一般社団法人 カンコー教育ソリューション研究協議会との産学連携キャリア教育プロジェクトを通じて、様々な立場からプロジェクトでの変化やこれからの学びについて語っていただきました。(全7回)

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社会に開かれた教育課程が全国で実践されている中で、130年以上前から実践されていた清心中学校・清心女子高等学校。その背景と、今も変わらず先生方も生徒も挑戦しつづけているその理由をシスターでもある校長 三宅 智子先生へ伺いました。

 

学校の特長は「大前提が女子ではない」という点

―― 貴校の目指す生徒像についてお聞かせください

女子校や女子大で女性のリーダーシップが世の中で言われる中で、ふと「リーダーシップってなんだろう」と考えるんです。「トップに立つ」「人をひっぱる」など、そういう意味ではないだろうと思います。

前理事長のお言葉で表現すると、リーダーシップとは「自分の置かれた場で咲ける人」であり「だれかに貢献できる人」と思います。「貢献」というと「大きな事業に取り組むこと」と捉えられるかもしれませんが「世の中で役目を果たすこと」と捉えてほしいですね。社会が求める人材は、時代時代で変わります。経済界の要請や国の方針に合わせることも必要ですが、いつの時代でも、要請があるときもないときも、人としてよりよいものを社会や家族に提供できる人、誰かを幸せにするためにお手伝いができる人、そのような「役割を果たす人」になってほしいと思っています。

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―― 貴校の特長についてお聞かせください

校内では「女性は」「女子は」と言葉がでません。むしろ必要ない環境なんです。「みなさん」「わたしたち」で語り合います。

女子・男子という以前に、人として自分を理解すること、つまり「人としての自分を発見し、育てる」それが、女子校の役割だと思っています。
わたし自身は、大学での共学経験もありますが、女子校での経験で「女子としての将来、キャリア、学部、ふさわしさ、強さ」とかそのような言葉で指導を受けたことはないんです。女子としてではなく「あなたはどうしたいか」「あなたにはなにが合っているのか」など、人としてどうかを本人も考えますし、関わるわたしたちも考えます。大前提が女子であることではないことが、逆に大きな特長といえますね。

 

成功することを考える時代がそろそろ終わる

―― これから必要な力というよりは、貴校にとってはこれから「も」必要になっていく資質・能力についてお聞かせください

Society5.0といわれる世の中を気にかけていろんな形で学んでいますが、進歩すればするほど「人間ってなんだろう」という問いにかえってきます。

何ができるかより、どう生きるか、どうあるか、どんな人柄をもつかというようなことが、より重要になっていくのではないかと思います。予測不可能な中で、成功ということを考える時代がそろそろ終わるのではないか。成功を考えても成功できない時代、何が成功なのかがわからない時代がくる。そうなると、よりよく生きる、人のために奉仕するという要素が、より大切にされる時代になっていくと思います。

そこは、ミッションスクールとして、学校が昔から大事にしてきたところでもあります。
お金持ちになることもあれば、貧乏になることもある。有名になることもあれば、無名であることもある。誰かの上で働くこともあれば、縁の下でずっと過ごすこともある。どこであっても、わたしはわたしとしてよりよく生きる。貢献ができる。そんなたくましさが、今まで以上に大事になっていく時代だと思います。

その点では、創立以来大事にしていたことが、改めて大事だと再確認させられている時代だと感じています。

 

生徒の“与えられた賜物”を見つけ、伸ばすことが学校の役割

―― 三宅校長先生が生徒へ語られる“与えられた賜物(たまもの)”についてお聞かせください

“ここに学ぶ皆さん一人一人が、与えられた賜物を見出し、それを伸ばすお手伝いをしたいと思っています。”

(学校HPに記載されている、生徒へのメッセージより)

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聖書や歴史の話を端的に、楽しそうに教えてくださる三宅校長先生

賜物というのは、貨幣のタラントンとして聖書の中での有名な例え話で登場します。

簡単にお話しすると「主人が旅に出る前に3人の僕(しもべ)に、異なる分の貨幣(タラントン)を預け、帰ってきたときに、儲けている僕もいれば、隠しておいた僕もいた」というお話です。受け取ったものをどう活かしたのかという話が、今ではタレント(才能)という言葉としても使われています。

この話で大事な部分は、多く受け取ったものが成功したわけでもなく、自分が受け取ったものを活かしたかどうかということ。生徒もわたしたちも、生まれたときに何らかの賜物をうけとっているので、誰かと比べるのではなく、それを見つけ、伸ばしていきましょうと伝えています。賜物は、あることさえ気づかない、あると気づいてもどこにあるかわかりません。それは、いろいろ勉強や経験を積んだり、友達と関係をつくることなどで見つけられ、伸ばすことができます。

 

「自己肯定感が低い」見方を変え、一緒に受けいれてみる

―― 大人側ができることはどんなことでしょうか

いま(の時代)は、肯定感をとても大事にしているように感じます。何かあれば「肯定的に」「ポジティブに」と言われますよね。その中で、なかなか自分をすごいと思えない生徒もいます。

それは、ある意味で自分の弱さや足りない部分を見ている、知っているということ。「自己肯定感が低いからダメ」ではなく、「自己肯定感が低いわたしは、意外と自分をわかってる人かも」という風に受け入れてみたらいいんじゃない?と思いますし、生徒とも話すんです。わたし自身もそういうことがあったので。

ネガティブなことが人を育てるという面もありますよね。失敗やネガティブなことも含め、いろんないい経験をさせてあげたいなと思いますし、そのような場を提供したり、関係性を育てるサポートをすることが学校の役割かなと思います。教員がすべて答えを持っているわけではないですからね。

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シスターたちの思いが学ぶ環境デザインにも垣間見える

 

大人の「やってみようかな」が実践につながり、伝統になる

―― これまで伺った話に、共感する先生や大人が多いと感じますが、実践する上でのヒントはどんなことでしょうか

もしかしたら、ヒントというより財産かなというところがあります。創設者はフランス人のシスターで、今でも創設の話をする際は、フランス革命から語られています。

学校の根っこの部分から外に開かれ、現在も17か国で教育施設や活動が行われています。はじまりも今も、外に開かれ、つながっているということはひとつの財産だと思います。そのため、ネイティブの先生や留学生がきても、みんなお客様としてもてなすのではなく、自然と受け入れる風土がありますね。

あとは、先生ですね。進取の気性といいますか、何か新しいおもしろいことをしようとする先生が多いのも特長だと感じます。

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の取り組みだけでなく、授業や体験活動、いずれも、先生たちの関心や思いによってプログラム化されています。
それができる大きな理由として、先生たちが考えを起こし、動けるんです。これやってみようかな、国内外の先生に連絡をとってみようかなど。先生たちが自分たちの発想をもって、なにか創りあげていくそんな伝統も、特長ですね。(取材当日は、理科の先生中心に生徒と先生のボランティアで里山の整備をしていました。“里山レンジャー”として環境教育の題材として実施されていました。)

 

人として生きる大切さに気づき、自分の根っこを育ててほしい

―今回のキャリア教育プロジェクトに取り組まれた生徒に、今後期待することはどんなことでしょうか

人としての生き方や大事なこと、賜物を「根っこ」として、それに「つばさ」をつけられたら、その人がよりよく生きることにつながると思います。

「つばさ」は学力や将来の職業選択、仲間との関わり、キャリア教育もそうですね。今の教育では、どちらかといえば「つばさ」を与えることに力を尽くしているように感じます。進路をしっかり指導するなど、具体的に生きていく上では必要なことです。

わたしたちも、もちろん学校なので「つばさ」を持てるように取り組んでいますが、わたしたちの学校で大事にしていることは「根っこ」を持てること、育てることです。生徒には、人として、生きる上でのルーツである「根っこ」を持ち、育てるように、ここでヒントを得てほしいと思います。
これから、カンコーさんとのキャリア教育“キラジョシプロジェクト”がはじまりますが、大きな「つばさ」をもち、飛ぶための機会だと捉えていますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

いかがでしたか? 関連記事では、様々な立場から教育やこれからについてお話いただきましたので、ぜひご覧ください。

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