2023.03.15 先生向けコラム 学校広報とは?生徒に選ばれる学校になるために

学校広報は以前より、生徒募集などさまざまな役割があります。
一方、少子化の加速やインターネット・SNSの普及に伴い、学校広報に求められる手法や視点が変化しているのも事実です。今回は、学校広報の「情報発信」についてご紹介します。

目次
1 学校広報に力を入れるべき理由
 1-1 加速する少子化
 1-2 学校数の減少ペースは確実に加速する
 1-3 学校広報の新たなキーワードは「コロナ禍」と「Z世代」
 1-4 偏差値だけでは選ばれなくなってきている
 1-5 「検索」される情報を発信する必要性

2 学校広報のメリット
 2-1 学校の魅力を無料で広く発信できる
 2-2 学校運営が円滑化する

3 インターネット・SNS時代に相応しい学校広報
 3-1 SNSを活用する
 3-2 生徒自身が母校の魅力を紹介する「YouTube甲子園」

4 おわりに

 

1 学校広報に力を入れるべき理由

1-1 加速する少子化

ニュースなどで盛んに報じられている通り、日本では急激に少子化が進行しています。政府の推計によると、2022年の出生数は国の統計開始(1899年)から初めて80万人を下回り、約79.9万人にとどまりました。

厚生労働省:人口動態統計速報(令和4年12月分)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2022/12.html

ランドセルを背負って歩く3人の子供_青空25000889_l.jpg

少子化については10年前の2012年にも警鐘が鳴らされていたものの、この年の出生数は103万人で、100万人を割り込んだのは2016年のことでした。

急激な少子化の影響は、学校経営にも表れています。日本私立学校振興・共済事業団私学振興事業本部が発表した2022年度私立高等学校入学志願動向では、入学定員充足率100%未満の学校の割合は68.5%に上っています。調査対象となった1,291校のうち、実に884校が定員割れに見舞われているのが実情です。

1-2 学校数の減少ペースは確実に加速する

日本私学教育研究所のまとめによると、国公立と私立を合わせた2022年度の中学校の総数は前年度比64校減の1万12校で、1万校台割れが目前となりました。私立は780校と前年度から2校増えましたが、公立は66校減の9,164校でした。高校も私立は1,320校と維持したものの、公立は3,489校と前年度から32校減っています。

国立社会保障・人口問題研究所が試算した2060年の出生数は約48万人ですが、少子化がさらに加速する可能性は否めません。
そうなれば、学校数の減少も避けられなくなりますが、学校の良さを周知する広報をしっかりすることで生徒に認知され選ばれやすくなる可能性が高まるでしょう。

1-3 学校広報の新たなキーワードは「コロナ禍」と「Z世代」

学校広報に力を入れるべき理由は、さらなる少子化に備えるだけではありません。新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、これまでの学校広報を変化させました。他人との接触が避けられないオープンスクールや体験授業の機会は減り、オンラインによる学校説明会が増えています。

そうした中、これからの学校広報に欠かせないもう一つのキーワードが「Z世代」です。1990年代後半から2012年頃までに生まれたこの世代はSNSの利用率が極めて高く、InstagramやTwitter、TikTokなどを通してあらゆる情報を収集する傾向があります。今やソーシャルメディアを利用しなければ、情報を伝えることすらままなりません。

1-4 偏差値だけでは選ばれなくなってきている

生徒が学校を選ぶ際、高校選びで知りたい必要情報が多様化しています。
カンコーが全国の現役高校生1,099人を対象に実施した、「高校選びで知りたい必要情報」の調査結果を見ると、「通学方法や時間」(51.4%)、「学校生活や在校生の雰囲気」(47.6%)、「進路(進学・就職)実績」(47.2%)、「授業内容や学校行事」(43.9%)など多岐に及ぶことが分かります。

また、「部活やクラブ活動」(43.2%)、「教育方針・校風」(42.7%)、「学校制服・デザイン」(36.8%)も多く、学校生活全般に関わる情報への関心の高さが表れています。
さらに文部科学省は2024年4月に大学全入時代が到来すると試算していますが、学校選びで重視されるのは、もはや偏差値だけではないのです。
 

1-5「検索」される情報を発信する必要性

さまざまな情報が溢れるネット社会では、情報を発信さえすれば必ず誰かの興味を引けるというわけではありません。常に新しく価値のある情報が求められている中、発信したタイミングで注目されない場合は、よほどのきっかけがない限りはそのまま埋もれてしまうのが普通です。

人の繋がりイラストと青い街並み_l.jpg

デジタルネイティブの「Z世代」は特に、気になる情報があれば必ず「検索」をするといわれているので、検索される情報を発信していく必要があります。

 

2 学校広報のメリット

2-1 学校の魅力を無料で広く発信できる

学校の魅力を伝える情報発信を活発に行うことで、日々のニュースを探しているテレビ局や新聞社などのマスメディアから取材の申し込みが入ることも珍しくありません。プレスリリースの発信やInstagram、Twitter、YouTube動画などの投稿に特別コストはかからず、取材を受ける際も報道される際も基本的にお金を出す必要はないのがメリットです。

もちろん、第三者のメディアを通じて発信された情報は信頼性が高く、生徒ばかりではなく保護者や地域の方々にも視聴してもらえるでしょう。学校広報は「開かれた学校」というポジティブな反応の醸成に役立つ上、そのような評判が浸透・定着すれば学校そのもののイメージアップにもつながるはずです。

学校のイメージアップは、地域住民をはじめとする校外の人々に認知・評価してもらってこそ果たせます。お金を払ってメッセージの内容や印象をコントロールできる広告を出すだけでは本当の意味での共感を得にくいことから、ありのままの魅力を伝える地道な学校広報が欠かせないのです。

2-2 学校運営が円滑化する

自校が力を入れている取り組みや理念、特色などを広く発信し続けることで、学校のカラーをよく理解した生徒が入学を希望してくれるようになります。「この学校に入りたい」という意欲のある生徒が増えれば、入学後「こんなはずではなかった」というミスマッチを減らす効果も期待できるでしょう。それによって生徒や教職員の方のモチベーションも高まり、結果的に学校運営が円滑化するはずです。

子どもたちが健やかに学べる環境が整っているかどうかは成績や進路に直接関係する要素のため、保護者にとっても喜ばしいことに違いありません。
 

3 インターネット・SNS時代に相応しい学校広報

学校広報のメリットなどをご紹介しましたが、ここからはこれからの時代に相応しい学校広報の事例についてご紹介します。​​​​​​

3-1 SNSを活用する

InstagramやTwitter、Facebookに公式アカウントを開設し、理科の実験など視覚にも訴える授業風景をはじめ、歴史の重みや環境の良さを感じさせる学校施設、アイデアと活気に満ちた校内行事などを発信している学校は数多く存在します。履修コースの紹介や体験授業の様子など、受験生と保護者向けの情報を公開しているケースもあります。

Twitter・InstagramをはじめとするSNSの最大の特徴は「拡散力」です。多くの人が親しみを感じられる「楽しさ」や「面白さ」を持ち合わせたカジュアルなコンテンツはキャッチーで拡散されやすく、好意的な反応を多く得られれば従来の広報などではアプローチできない層へのPR効果を期待できるでしょう。

3-2 生徒自身が母校の魅力を紹介する「YouTube甲子園」

カンコーのグループ会社で、ひとづくりに特化した教育ソリューション事業を展開しているカンコーマナボネクト株式会社などが主催する「YouTube甲子園」は、全国の高校生が自身の学校の魅力を発信するYouTube動画コンテストです。2020年に始まった大会は、受験生と年齢が近い生徒の目線で発信されるリアリティーに満ちた学校の魅力が好評で、2023年春に開催された大会(第5回)には全国65校165チームがエントリーしました。

過去に開かれた春と夏の大会では100万回以上再生された動画もありますが、「YouTube甲子園」の意義は、たくさんの視聴回数を期待できることだけではありません。コロナ禍でさまざまな学校行事が制限された中、生徒自身が主体的に楽しみながら活動でき、青春時代の思い出も残せる場として役立っています。

また、仲間と協力して企画・準備・撮影・編集に携わる経験は、企画実行力や探究力、協創力などの能力向上にも結び付きます。「YouTube甲子園」による学校広報は、子どもたち自身の成長という新たな役割を担うことも期待されています。

Youtube甲子園公式チャンネル
 

4.おわりに

学校広報における情報発信は多額の資金も設備も必要としません。学校の魅力は特別な教育プログラムや行事だけではなく、日々の学校生活を満喫する生徒たちの笑顔などにも凝縮されています。学校広報にとって大切なのは、そうした有形無形のアピールポイントをいかにスムーズに発信するかということです。

広報の役割は企業も学校も同じで、自分たちの認知を広げ、ファンを醸成するかがカギとなります。小さなことからコツコツと発信しながら、「YouTube甲子園」をはじめとするコンテストやコンクールもぜひご活用ください。
私たちも学校広報の取り組みでお悩みの先生方とともに、最適な情報発信の在り方を考え続けていきたいと思います。

カンコーのグループ会社のカンコーマナボネクトでは学生とYouTube チャンネルを共に運営し、
学校の魅力を生徒目線で再発見・発信していくプロジェクト「School Youtubeプロジェクト」を運営しております。
詳細は下記チラシよりご覧ください。

School Youtubeプロジェクト チラシ
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カンコーでは学校現場や子どもたちの未来を共に考え・共有する場というコンセプトのもと先生方に教育関連の情報を発信していく「Teacher with」というサイトを運営しております。その他の情報は下記のバナーよりご覧ください。
↓こちらをクリック
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[記事作成日]2023/3/15


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