2023.02.01 先生向けコラム 家庭科の授業に活用できるSDGsを取り入れた授業例

学習指導要領の改訂により、2022年度から高校の教材などに大きく取り上げられるSDGs。
家庭科の先生方もどのように授業に取り入れていくか検討していらっしゃるのではないでしょうか?
カンコーは、学生服メーカーとして日々さまざまな学校とSDGsに関する取り組みを行っています。その中で、SDGsを取り入れた家庭科授業を実践されている先生にインタビューを行いました。
なぜ家庭科の授業でSDGsを取り入れたのか、どのようにSDGsを授業に落とし込んでいったのかを中心に紹介していきます。

この記事を読んで来年度からの授業のヒントにしていただければと思います。
 

目次
1 なぜ授業にSDGsを取り入れる必要があるのか
2 先生の紹介
3 なぜ家庭科の授業でSDGsに取り組んでいるのか
4 SDGs×家庭科 どんなことをしてきたのか
・4-1 事例紹介
・4-2 生徒に自分ごと化してもらうために工夫したこと
5 今後の挑戦・取り組みたいこと
6 SDGsに取り組もうとされている先生にメッセージ

1 なぜ授業にSDGsを取り入れる必要があるのか

最近学校教育でも注目されているSDGs。なぜSDGsの教育が必要になってきているのでしょうか?

※SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に国連サミットで採択された持続可能な世界を実現するための17のゴールと169のターゲットから構成される国際目標であり、世界全体で2030年までに社会が抱える様々な問題を解決することを目指しています。

SDGs教育が必要な理由は大きく分けて3つあります。

(1) 新学習指導要領が年次進行で実施
新学習指導要領の中に、「持続可能な社会」などに関する記載があることから、SDGsは教科書や副教材にも多く取り入れられてきています。
また2022年度から高校の家庭科の教材にもSDGsが大きく取り上げられるようになり、これからは授業にSDGsを取り入れることが必要になってきています。
SDGsをどのように子どもたちに教えるのか、どのような手段でSDGsを教えられるのか、まだ検討中の先生方もいらっしゃるのではないでしょうか?

(2) 入試にもSDGsに関連した問題が出題
入試の設問にもSDGsは登場しています。国公立大学の小論文試験にも「SDGsに関して自分の関心のあるものを答えなさい」という設問があるなど、各教科の入試対策でも基礎知識としてSDGs教育の必要性が感じられます。


(3) SDGsのターゲット4.7を通した教育
SDGsのターゲット4.7とは、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」にあるターゲット7のことです。そこには、一言でいうと「平和と持続可能性のビジョンに基づいた、態度、行動変容を目指す教育の普及」が記されています。
その教育とは、ESD(持続可能な開発のための教育)、環境教育、開発教育、平和教育、国際理解教育、人権教育、グローバル・シチズンシップ教育等を指し、その推進が求められています。
 

引用:SDG4.7 教育を通してSDGs達成に貢献する

これら3つの理由からSDGs教育が学校でも必要になっていることがおわかりいただけるかと思います。

 

先生の紹介

今回、「授業へどのように取り入れているのか知りたい」「家庭科の授業でどのように教えればよいか」と検討されている方のために、佐賀商業高等学校(以下:佐賀商業)で家庭科教諭をしている平野先生にお話を聞いてきました。

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3 なぜ家庭科の授業でSDGsに取り組んでいるのか

家庭科を教えるにあたって、生活を豊かにする知識・技術、社会に出るために必要なマナーなど教えたいことがとてもたくさんあります。しかし、各単元で完結してしまっており、何か1つテーマをもって授業を組み立てたいと思っていました。
そこで2020年度に「防災」というテーマで授業を組み立て、防災グッズの考案、災害時のポリ袋クッキング実習、制服生地を活用した防災座布団製作などの授業を行いました。

「防災」というテーマで授業を行うことで生徒が防災への意識を高めてくれたとても良い取り組みでしたが、やはり防災だけで完結してしまい、もっと幅広く、もっと深く扱えるテーマで授業を組み立てたいと思っていました。

そんなとき学習指導要領の改訂により、SDGsが高校の家庭科の教材にも大きく取り入れられることになると予想されました。生活と密着した教科である家庭科授業の中に紐づけ、教えることを念頭に2022年度からSDGsをテーマに取り組むこととなりました。

 

4 SDGs×家庭科 どんなことをしてきたのか

佐賀商業のSDGsに対するゴールは、「SDGsを生徒に自分ごと化して考えられるようにすること」です。
やはり、SDGsはインプットするだけではなく、どれだけ自分の中に落とし込んで取り組んでいけるかが一番大切です。
SDGsを自分ごと化するまでは3ステップが必要だと思っています。

◆生徒へSDGsのインプットをする
◆SDGsを身近なものと感じてもらう
◆SDGsを自分ごと化する

このステップに沿って行った8つの取り組み事例をご紹介します。

4-1 事例紹介

◆生徒へSDGsのインプットをする

(1) SDGs冊子の作成
まずはSDGsについてまとめた冊子を生徒のために作成し、配りました。
SDGsとは何なのか、どのような取り組みがあるのかを生徒にインプットしました。

sdgs_book.jpg


(2) SDGsに関する宿題
ゴールデンウィークにSDGsに関する宿題を出しました。
先ほどのSDGs冊子に空白を作り、そこに適切な文章を埋めてくるというものです。
※下記画像赤枠の部分
わからないなりにSDGsを調べ、私たちに何かできることはあるのか、どのようなことがSDGsと呼べるのかを知ってもらいました。

sdgs_book2.jpg


 

◆SDGsを身近なものと感じてもらう

SDGsのインプットが終わったところで、次に大切なのは、「SDGsは遠いものではなくすごく身近なものなのだ」と感じてもらうことです。
生徒に身近に感じてもらうために実施したことをご紹介します。

(3) SDGsセミナー
企業の方々に自身の企業のSDGsの取り組みなどを説明してもらい、身近なものにSDGsが関わっているということを知ってもらいました。

ちなみにカンコーさんにも佐賀商業にSDGsセミナーをしていただきました。
入学から卒業までの3年間、1着の制服を長く大切に着続けることで、学校に来て行くために私服(一般衣料)を沢山買わなくてよくて、結果、資源を大切にし、ゴミを減らすことができ、SDGsにつながっているということを伝えてもらいました。

sdgsseminar.jpg
 

(4) SDGsとがん教育
リレー・フォー・ライフ・ジャパン※の方をお招きし、全校生徒へ講演をしていただきました。
青年海外協力隊に行くほどの健康体であった講演者の方が突然のがん宣告を受けながらも、アクティブに生きている姿を、ありのままに語っていただいたことで、生徒たちに「がんが身近であること」をお話いただきました。
また、がん検診の促進や各種制度の整備をすることで健康と福祉の目標に貢献していることなど、がんとSDGsのさまざまなつながりも教えていただき、SDGsが本当に自分たちにとって身近なものであることを感じ取ってもらうことができました。

※ がん患者さんやそのご家族を支援し、地域全体でがんと向き合い、がん征圧をめざすチャリティー活動を行っている団体。

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(5) 環境フォトコンテスト
出光興産主催の環境〇✖フォトコンテスト※に応募する写真を撮るという夏休みの宿題を出しました。

※身近なところにある、いつまでも残したい「〇」の風景と、すぐに改善したい「×」の風景を写真にして、コメントを添えて作品にするフォトコンテスト。

生徒たちは、コンテストに応募するために改めて地域を見渡してみて、ゴミ問題や景観の問題等、さまざまなことに気付いてくれていました。

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(6) おにぎりアクション
NPO法人TABLE FOR TWO International主催のおにぎりを通じて世界の子どもたちの給食を支援するプロジェクトに参加しました。
おにぎりアクションは「世界食料デー」にちなんだプロジェクトで、おにぎりが写っている写真をSNSなどに投稿すると、1枚の投稿で給食5食分を届けることができます。このプロジェクトに全校生徒約720人が参加し、計1,196枚の投稿=5,980食分の給食を支援することができました。

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(7) 文化祭でのプラスチックゴミを使ったモザイクアート
「プラスチックゴミのポイ捨てを無くそう」というメッセージを込めて、1年生全員で、プラスチックゴミを使ったモザイクアート(縦2メートル×幅6メートル)を作成し、展示しました。
この取り組みでSDGsをより身近に感じることができ、また地元の新聞にも掲載していただきました。

mozaicart.jpg

 

◆SDGsを自分ごと化する

生徒にSDGsとは身近なものだと感じてもらったあとは、SDGsを自分ごと化してもらいます。SDGsを達成するための手段、どのようなゴール設定にするのかしっかりと考えてもらうことが大切です。


(8) SDGs商品企画
佐賀商業では、SDGsを自分ごと化するために、制服の余り布を使った商品企画から販売までを包括的に行いSDGsを学ぶ授業を実施しています。
商品企画としては、各クラスでグループに分かれてエコバッグやブックカバーなどの商品を企画し、その内容をプレゼンテーションするところまでを実施しました。1位に輝いたチームの商品を実際に制作し販売まで行う予定です。
この取り組みでは、作った商品はどういった点でSDGsに貢献できるのか、また売上はSDGsの視点でどのように活用していくかまで考えて、SDGsに対する理解を深めました。

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この3ステップ(インプット、身近に感じる、自分ごと化する)の取り組みを行うことで生徒がSDGsについてしっかりと理解を深めることができたと思います。
 

4-2 生徒に自分ごと化してもらうために工夫したこと

やはり、SDGsとは遠い世界のもの、自分とは関係のない難しいものに感じがちです。
生徒に自分ごと化してもらうには、普段の何気ないところにSDGsのポイントを探し、生徒にわかりやすく伝えることです。
そうすることで、生徒も身の回りのものがSDGsに関わっていることを感じることができ、楽しく主体的に学んでくれます。
また講演会や教材などのインプットだけではなく、商品企画などの、実践的な活動で学ぶことで、自分ごと化してくれやすくなると思います。

 

5 今後の挑戦・取り組みたいこと

SDGsを教育に取り入れるうえで大切なことは他の先生を巻き込んでいくことです。
やはりSDGs教育よりも資格試験や受験勉強を優先されます。もちろんそれらも大切なことで、していかなければならない気持ちもわかります。
でも同じくらいSDGsを学ぶことは生徒たちにとって重要なのだということを伝えていきたいです。
そのためにも普段、自分が教えている教科にSDGsに関連することがあるということを伝えていくのもよいかもしれません。
教科ごとにSDGsの冊子を作るなども今後挑戦できればと思っています。

 

6 SDGsに取り組もうとされている先生にメッセージ

SDGsは難しいものではありません。日常にあふれているものです。
生徒にSDGsを教えることで日頃からエコバッグを使うなどのSDGsを意識した行動をしてくれるようになり、良い心の変化がたくさんありました。
またSDGsに取り組むことは、家庭科を楽しんでもらうことにも結果的につながります。皆さんぜひSDGsに取り組んで、家庭科をもっと楽しくしていただければと思います。
 

平野先生の取り組みを参考にぜひ皆さんもSDGsに取り組んでいただけましたら幸いです。
事例にあったSDGsセミナーやSDGs商品企画はカンコー協力のもと行いました。

SDGsセミナーの詳しい資料はこちら
sdgsdl.jpg

子どもたちの未来をともに考える「Teacher with」はこちらsenseiyell_pc_w1136h432-02.jpg


その他関連リンク
商品企画を通して考えるSDGs❘佐賀商業高等学校
カンコーのSDGsの詳しい取り組みはこちら

[記事作成日]2021/12/22
[記事更新日]2023/2/1

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