2018.03.22 キャリア教育 日々の学びをつなぐ特別活動 【後編】


岡山県立津山商業高等学校は、生徒が地元企業と連携し、仕入れから販売までを行う大規模な学校行事「津商モール」を行っています。さまざまな教科の中で、津商モールに関連した取り組みを扱っており、日々の学びが特別活動によって、まとめられ、つむがれています。集団的な活動や自主的、実践的な活動によって、主体的に行動しようという意識が芽生える生徒も増えています。後編では、生徒たちへの指導に尽力された先生方へのインタビューをご紹介します。

育みたい資質・能力の焦点化で生徒たちの行動も変わる



岡山県立津山商業高等学校
槇野 滋子 校長

 本校は岡山県北で唯一の単独商業高校として、地域社会とのつながりや関わりは深く、地域から期待や支援を多く寄せられてきました。特に「津商モール」は地元企業をはじめ、政財界、住民など多くの方々が支援してくださる、本校のみならず地域の一大イベントとなっています。津商モールは、地域社会と関わりながら生徒たちがいきいきと学習活動を展開できる、もっとも商業高校らしい学校行事であり、キャリア教育を実践する貴重な機会です。教員も一丸となり「チーム学校」で生徒の取り組みを支えています。

 津商モールは「販売実習」という学習の一つですが、高校生の力で地域を元気にする活動として期待されています。津山市では人口減少という深刻な課題を抱えており、将来的には本校の存続にも影響すると思われます。本校から地域活性化し、課題解決に寄与したい。そのためには地域との結びつきが強い津商モールをさらに活性化しようと、昨年度から2年間、文部科学省の研究指定を受け、社会で必要となる資質・能力を特別活動を核として身に付けるキャリア教育の取り組みを行っています。

 「つしょうレインボープロジェクト」という愛称で、身に付けさせたい7つの資質・能力を整理。行事ごと、役割ごとに身に付けたい資質・能力を焦点化しています。例えば、津商モールの1年生店舗では「チャレンジ力」「プレゼンテーション力」などと、身につけたい資質・能力を明示。そうしたことで意識して行動しようとする生徒も多くみられるようになりました。

 また、授業でも津商モールに向けた取り組みを展開。商業の授業では津商モールの売上データを使ったマーケティング、国語の授業では店舗のキャッチコピーやリーフレットの作成など、教科横断的な視点で取り組んできました。同プロジェクトに取り組んだ2年間で、主体的に考えてほしいなど、私たちが向かってほしい方へと進んでくれる生徒が確実に増えており、特別活動の素晴らしさを実感しています。

   今後も津商モールなどを通じたキャリア教育を実践し、地域に根ざした視点から世界を見据えることのできる人材「ローバル人材」(ローカルとグローバルを合わせた造語)を育成する、21世紀型の商業教育を発信していきたいと思っています。
 

教員のチャレンジ力を大切に生徒が挑戦できるきっかけづくりを



岡山県立津山商業高等学校
商業科主任 安東 真美 先生

   津商モールは3年間の勉強成果を実践する学びの集大成の場としてはじまり、今回で9回目です。3年生はモール全体の企画運営、2年生が店舗販売、1年生は児童を対象としたお仕事体験「キッズビジネスタウン」をそれぞれ担当。学年が上がるに連れて、役割や担当が変わるため、段階的に学べる仕組みとなっています。生徒が主体となって企業から商品を仕入れて、当日店舗で販売しますが、依頼する企業は地元企業を中心に生徒たちが選定。企業ごとに担当の生徒を決め、仕入れ方や販売方法を打ち合わせします。例年同じ企業が多いですが、新規の企業も毎年数社お願いすることもあります。高校生の活動ということで、積極的に協力してくれる企業は多く、中には津商モールに出店したいという企業もあります。また事前学習として研修をしてくださる企業もあり、生徒たちには貴重な経験となっています。

 「キッズビジネスタウン」は3年前から津商モールと同時に開催。津山商工会議所との共催で、地元企業の協力のもと、20数種類の職業が体験できるもので、生徒は運営の支援を行います。児童や企業と関わることで、異年齢交流ができるとともに、地元企業を知ることでき、2年時の販売実習に向けた段階的な学びにもつながっています。3年生はコンセプトなど一から企画していかなければなりませんが、2年間体験していても、何をしたらいいか分からないという状態。そこから話し合いを繰り返し、自分たちの思いを形にしていきます。答えがない活動のため、教員はアドバイスのみにとどまり、生徒が型にはまらず、アイデアを出しやすい環境づくりを心掛けています。

 「つしょうレインボープロジェクト」をはじめてからは、生徒自身がどの活動でどんな能力が身につくのか、意識しながら行動できるようになったのが印象的で、学年が上がるごとに意識が強くなっているように感じます。津商モールの中では、一人ひとりが自分の役割の中でやるべきことを意識して主体的に行動できる生徒が増えていると実感していますね。生徒が自らやってみたいという思いを育てていくには、教員にもチャレンジ力が必要だと思います。教員も生徒とともにチャレンジしていく気持ちで、きっかけを作ることが大切だと感じています。

【取材を終えて】
   今回の取り組みで特筆すべきは、新たな取り組みを始めたわけではなく、既に行われている教育活動を棚卸しし、育みたい資質・能力ベースで再整理・マイナーチェンジしていること。普通科校でも、文化祭や体育祭などを中心として十分に展開可能な事例ではないかと思います。まずは、教育活動の現状把握、棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか?

(取材 / 川田 達彦)



いかがでしたか? 前編では、津商モール運営の中心を担った生徒代表へのインタビューも紹介しておりますので、そちらもぜひご覧ください。
 

「カンコーは、子どもたちの夢と学びを応援しています」

※本稿は、(一社)カンコー教育ソリューション研究協議会からの業務委託により、菅公学生服株式会社がお届けする学校現場のお悩み解決を目的とした教育関係者様向け情報誌 『カンコータイムズ』 を基に加筆した記事です。