2020.12.03 カンコーエールプロジェクト カタチにとらわれず、社会の形や人々に合わせて変化していく│新潟南高校

新潟県立新潟南高校では、平成15年度の文部科学省【スーパーサイエンスハイスクール(SSH)】研究開発校の指定以来、平成30年度からは第4期目の指定を受けています。
第4期SSHでは、「未来イノベーションを牽引する、科学技術系グローバル人材の育成」を目標として全校で実施されています。

この一貫として、昨年、学校設定科目【江風SSG】にて自分たちの身近な存在として制服に着目し【ジェンダーレス制服~LGBTを考えた理想の制服をつくる~】というテーマで研究に取り組まれた、相田さん、岡村さん、宮北さん、武者さんにお話しを伺いました。

niigata01.jpg※左から相田さん、岡村さん、宮北さん、武者さん

 

―研究テーマについて、選んだ背景と内容を教えてください。

(相田さん)まず研究テーマを決めるにあたって、身近な存在の「制服」に着目しました。調べていくうちに、制服にはたくさんの利点があることがわかりました。一方で、LGBTの方など制服を着ることで苦痛を感じている方がいることも知りました。そこで、現在の制服の良い点は残しつつ、誰もが気兼ねなく着られる制服をつくろうと考えました。

 

―この研究を振り返って、感想を教えてください。

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(相田さん)はじめは、限られた時間の中でどこまで活動の幅を広げられるか不安でした。ですが多くの人に協力していただき、最終的に制服を実際に作ることができたので、とてもよかったです。また、この研究を通してLGBTについて学ぶことができてよかったと思っています。

(宮北さん)一年間すごく楽しかったです。誰もが気兼ねなく着られる制服のデザインをみんなで考え、相応しいと言えるか調査し、結果を元にまたみんなで考えました。ああでもない、こうでもないと喋る時間もいつもワクワクしていたように思います。自分たちの活動は終わりましたが、ずっと続けたかったと思うほど楽しい一年でした。

(岡村さん)この研究を通じて、LGBTに関して日本が世界的にみて本当に遅れていることがわかりました。また自分がいつも目にしている制服(男子はズボン、女子はスカートを着ること)で、苦痛に感じる人がいるとわかり、自分の価値観を見直す機会になりました。

(武者さん)設定したテーマから、制服を着る文化や日本人の性格まで広く調べられたのでよかったと思います。

 

―研究成果はアメリカで発表されたと伺っています。反応はいかがでしたか?

 

(相田さん)アメリカではサンフランシスコとロサンゼルスの2か所で発表しました。
特にサンフランシスコは、法律なども整っており、LGBTに関する意見や感想が多かったです。

(宮北さん)背景として日本の文化や日本人の性格から話し、毎日同じ服を着るアメリカの有名人を例にして伝えたことで理解してもらえたのかなと思います。使うワードを工夫したのも、よかったように思います。“ユニフォーム“だと、アメリカでは別のものが連想され、日本の制服文化が正確に伝わらない可能性があると先生から教わりました。なので、あえて”Seifuku”というワードにして伝えました。
またLGBTについて、発表した私たちへの投げかけだけでなく、アメリカの生徒同士で制服について積極的な議論が始まったことも印象的でした。

 

―制服への感想ってどんなものでしたか?

(相田さん)アメリカには日本のような制服文化が存在しないので、実物を見せたときどう見えるか不安でしたが、興味をもってくれてとても嬉しかったです。また、日本人にとっての制服の重要性も理解してもらえたようでした。

(岡村さん)ロサンゼルスは、制服そのものへの反応が多かったです。アメリカの女子生徒は、ほとんどジーンズなどのズボンをはいて学校生活を送っているため、 “日本の女の子はスカートをはくと決まっていること”に対して「本当に?それが決まりなの?」と驚かれました。

 

―日本での感想は違ったのでしょうか?

(宮北さん)日本でもらった感想は、“自分たちの制服が変わるならどうだろう”等、制服を日常的に着用している日本の高校生ならではの意見という印象を受けました。

 

―研究や成果発表を終えて、周囲の反応はいかがでしたか?

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(相田さん)これまで、理系の研究は実験結果など数値や事実を使うことで説得力を持たせられる一方で、文系は論理的に伝えるのが難しい印象でした。ですが今回、制服というテーマを取り扱ってみて、実物があると説得力が増すと思いました。また細田智也さん(※)から伺った内容を伝えられたことも強みになったと思います。

※細田智也さん
幼い頃より女性として生を受けたことに違和感を覚え、23歳で男性として生きるため性別適合手術を受ける。現在は、埼玉県入間市市議会議員として活躍中。

(宮北さん)アメリカでの発表は私たち以外は全員理系のチームでした。事前練習でサイエンス系の発表を聞きに来た人たちに対し、自分たちの研究は興味を引きにくいと感じたので、隣の班より大きな声を出し、少しでも興味があるように見えた時は積極的に声を掛けました。また、原稿を用意せず、聞き手の反応を見ながら発表することを心掛けました。最終的にたくさんの人に興味を持って聞いてもらえました。

(岡村さん)作った制服を見た部活の友人から「着たい」と言ってもらえたことがうれしかったです。

(武者さん)担任の先生からも企業との連携をほめていただきました。また友人たちから、実際の制服についてたくさんの意見や感想をもらいました。制服について友人と話す機会を作ることができてよかったです。

 

―研究を進める中で大変だったこと、苦労したことはありましたか?また、どのように乗り越えたのでしょうか。

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(相田さん)LGBTに関しては非常にセンシティブで個人のプライバシーにも関わることなので、ご協力いただける方が見つかるまでが難しかったです。また、卒業生にとっては今の制服が思い入れのあるものなので、“改良”だとしても、変えることに対して後ろ向きな意見もあり、苦戦しました。

(宮北さん)研究の中で「じゃあ制服をなくせばいいんじゃない?」という声も聞きました。それに対し「なくしたくない」という自分たちの感情論で進めてしまうと研究が根本から崩れてしまいます。そのため、日本人の集団意識や人間性、制服文化から土台をしっかり作り、如何に論理的に説明するか、という点に注力しました。発表の直前まで悩んだポイントです。

 

―研究の中で、みなさんご自身で理想の制服をデザインされました。すべてを終えた今、みなさんにとって制服とは、どんな存在ですか?

(相田さん)今の制服は、高校生活のために機能性、重要性もある反面、LGBTの方など苦痛を感じている人がいると知り、考え方が変わりました。制服は学校にとって伝統の一つだけれど、型にとらわれず、社会の形に合わせて変化していくべきなのかなと思っています。

(宮北さん)アメリカでは、デザインした制服と現在の制服を着て発表しましたが、その時に現在の制服の方がかわいいとほめてくれた人がいました。それで、この制服も悪くないなと思えるようになりましたし、将来なくなったら寂しいなと思うようにもなりました。でも、これは私個人の感じ方です。研究を通じて、一秒でも早く脱ぎたい、嫌な思い出しかない、という人もいることに気付きました。これから制服を着る子たちにとって、制服が良い思い出として残るように、だんだん変わっていけばいいなと思います。

(岡村さん)私は制服を着ている全員が誇りを持てるような制服になっていってほしいです。

(武者さん)「制服は本当に必要なの?」という声を聞いた時に改めて“制服とは私たちにとってどんな存在か“考えたのですが、制服はスイッチになるなと思います。私は学校だと勉強に集中しやすくて、それは制服を着ているからだと気付きました。改めて、制服は着ていたい、必要だと思いました。

 

―最後に、夢や目標、また目標に向かって頑張っていることを教えてください。

(相田さん)教育に関わる仕事につきたいと思っています。今回、研究を通して、自分と違う視点で捉えることの大切さに気付きました。将来教師になったら、制服の他にも視点や立場の違いからくるストレスに目を向けられる人になりたいです。

(宮北さん)この研究で細田さんのお話しを伺ったことで、社会には思わぬところで辛い思いをしている人もいると気が付きました。苦しむ人がいない社会になればいいなと思い、進路も変わりました。そういった人たちが安心して暮らすことができるような社会づくりに携わる職業に就きたいです。

(岡村さん)教育で国際的に関われる仕事に就くことを目指しています。今回研究して知ったことは自分にとってとても大きく、伝えなければいけないことだと思っています。将来、もし教師になってその学校に制服があったとしたら、全員がストレスを感じず誇りを持って着ることができるようにしたいです。

(武者さん)新潟市の行政に携わって、魅力を世界に発信していきたいです。研究でアメリカに行ったことで、改めて新潟の良さも感じました。ここに住みながらも、世界と繋がれることをしたいと思っています。

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未来の自分へ 勉強を楽しめる人になる!! 武者さん
未来の自分へ 自分も周りの人も大切にする 宮北さん
未来の自分へ 信じた道を突き進む 岡村さん
未来の自分へ 周囲の人に恩返しをする 相田さん

 

まとめ

「誰もが着たい制服ってどんなものだろう。」1つの疑問をきっかけに、様々な人に自分たちから働きかけ研究を進められた相田さん、岡村さん、宮北さん、武者さん。初めてお会いした時から1年近く経ちましたが、取り組みを終えた皆さんの顔は一段と晴れやかで、頼もしく見えました。

インタビューの最後、将来の夢を伺った時には少し照れながらも、しっかりと自分の言葉で想いを話してくれた皆さん。これからの活躍が心から楽しみです。

これからも学生と学生生活を支えるすべての人に寄り添い、カンコー学生服はエールを送り続けます。

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