2018.10.17 先生向けコラム 一貫した指導が子どもの将来をつくる! 改めて考える「キャリア教育」の重要性

キャリア教育は教育業界で長い間キーワードになっており、未来を担う人材を育てるうえで重要な施策です。
ですが実際の学校現場では、「時間がとれない」「単発で終わってしまう」「教員によってやり方がバラバラ」などの課題があるのが現状です。

そこで今回はキャリア教育の目的や背景、学校全体としての取り組み方、キャリア教育の代表的な活動であるインターンシップの実施方法をご紹介。
キャリア決定により近い、高校にフォーカスして取り組みのイメージをつくります。
キャリア教育に関する体系的な理解の助けになれば幸いです。

目次
1.キャリア教育の背景と職業教育・進路指導との違い
 1-1. キャリア教育が必要とされているのはなぜ?
 1-2. 職業教育・進路指導とキャリア教育
2.キャリア教育の取り組みイメージ
 2-1. 学校内と学校外で行う
 2-2. 校内組織の整備と学校間・地域との連携
3.インターンシップの活用について
4.まとめ―目に見えない成長をいかに促せるかが勝負

1.キャリア教育の背景と職業教育・進路指導との違い

1-1. キャリア教育が必要とされているのはなぜ?

そもそも、なぜキャリア教育が必要になったのか。その理由は「社会の変化」と「子どもたちの変化」という2つに大別されます。

一つ目の「社会の変化」というのは20世紀終盤から起きたデジタル化革命により、産業や経済環境が劇的に変化したことです。人工知能(AI)の導入など第四次産業革命と呼ばれる産業構造の変化が進む中、従来のようなキャリアイメージがつくりにくくなっています。

現代の子どもたちの多くが今はまだ存在しない仕事につくなどとも言われているように、選択肢がたくさん増えた一方で、それらの選択肢がまだ明確には見えておらず、イメージできないのが現状です。また、身近な生活の中に職業を意識できる機会が減り、職業選択を自分ごととして考えにくくなっているともいえます。

二つ目は「子どもたちの変化」です。人間関係の構築や意思決定が難しかったり、自己肯定感を持てなかったりする子どもが増えています。目先の大学進学に気をとられ、将来について考えることを先送りしてしまい、結局自分のやりたいことがいつまでも見つからない、という学生も少なくありません。これには社会的環境変化が大きく影響していると指摘されています。

こうした事実から、学校教育には、子どもたちに対して、自分のキャリアを真剣に考え、それぞれのキャリア形成に必要な意欲・態度・能力を育て、キャリア発達を促すサポートが求められています。
 

1-2. 職業教育・進路指導とキャリア教育

平成23年1月31日の中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」において、キャリア教育が次のように定義されています。

一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育

一方、これまで学習指導要領などで用いられてきた「職業教育」は次のように定義されています。

一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育

つまり、職業教育は特定の職種になるための訓練のことであり、キャリア教育は単なる「将来の夢探し」ではなく、社会人として自立するために必要な能力・態度を育むことであると言い換えられます。

進路指導とキャリア教育も混同して使われることがあります。進路指導という言葉には、キャリア教育と同様、職業だけでなく、社会での生き方を見つけるという意味が含まれていますが、進路指導という言葉が使われるのは中学と高校に限られます。そのため、どの高校、どの大学に進学するかといった出口指導であるというイメージが広まっています。

中学高校で行われているキャリア教育は、本来の意味での進路指導とほぼ同じ内容ではありますが、キャリア教育は、学校段階を問わず、就学前から社会人になるまで一貫した生き方の指導です。
進路指導とキャリア教育はこのような包含関係にあると認識しておきましょう。
 

2.キャリア教育の取り組みイメージ

キャリア教育は教育現場で一貫して行われる活動のため、学年や時期によって取り組む内容を変えながら、徐々に子どもたちの意識を明確化していくことが大切です。小中学校では、主に職場体験や職業についての調べ学習、地域の方の講演会などが行われています。

しかし高校では、大多数が進学する中学校までと違い、卒業後の進路が多様になるため、3年間のより明確なイメージを持った取り組みが求められます。そこで今回は高校におけるキャリア教育にフォーカスして取り組みイメージを解説していくこととします。

2-1. 学校内と学校外で行う

3年間通して行うといっても、実際には、入学したばかりの生徒に「進路について考えなさい」と言ったところで、具体的に考えられる生徒は多くありません。
キャリア教育は生徒一人ひとりに合ったものでなければいけません。また、ホームルームや総合的な学習の時間だけでなく、日々の授業や学校行事の際にキャリアを意識できるような設計が必要です。

具体的には、担任を中心とする教員によるキャリアカウンセリングやOBOGによる講演会などの内部で行うものと、ボランティア活動やインターンシップなどの外部での体験学習に分けられます。

まずカウンセリングは教員が中心となって行い、生徒を理解すること、生徒に意欲や自信を持たせることを目的としています。個別カウンセリングは、学期に1度などで行っている学校も多いと思いますが、それだけでは生徒の考えは十分には深まりません。日常の授業や学校生活を通して、将来を意識させ続ける必要があります。
講演会などは単発開催で終わりがちですが、そこで考えたことを個別のキャリアカウンセリングにつなげるなど、学び自体が単発で終わらないような工夫することはできます。生徒が自分と向き合い考えていることを教員が感じ取り、断続的にフォローしていく姿勢を持つことが必要でしょう。

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次に外部での体験学習です。職場や施設等の見学、インターンシップ、大学のオープンキャンパスへの参加、自然体験、ボランティア活動など、多様なアプローチ方法があります。しかし、これらの活動がキャリア形成につながるような体系的な学びとしては行われておらず、ひとつの学校行事として消化されているケースも少なくありません。
学校として3年間でどのようにキャリア教育をするのか明確にし、その目的を生徒に伝わる形で指導しなければなりません。そのためには、事前・事後学習の指導に力を入れ、つながりを持たせる工夫が必要です。

それがあってはじめて、計画的に地域と連携し、生徒たちの職業観を広げさせたり、将来への見通しを立てさせたりできるのではないでしょうか。
 

2-2. 校内組織の整備と学校間・地域との連携

キャリア教育を計画的に行うためには、校内の指導体制を整えておく必要があります。担当の学年を問わず、全校でのキャリア教育推進チームをつくるなど実施している学校も多いでしょう。しかし仕組み化するだけでは不十分で、教員全員が3年間のキャリア教育プログラムに対して意思統一をし、有機的に動いていくことが求められています。

体験学習などについては、外部との連携が必須事項です。学校内にパイプ役となる教員を配置し、連携をスムーズにしていくこと。学校と地域、企業、家庭のつながりを強めておくことは、生徒たちの体験学習を通した学びの精度にも影響します。
特に実際に企業で働いている現場を見たことのある生徒は少ないため、企業人との触れ合いは大きなインパクトとなります。したがって、企業との人脈づくりを含めた強い連携が重要になってきます。

また、キャリア教育は学校段階を問わず一貫した活動であるため、小学校・中学校・大学など、他の学校との連携もできるだけ行うことが望ましいでしょう。生徒にとって一貫性のある指導になっているかどうかが大切です。
 

3.インターンシップの活用について

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小中学校では、職場を見学したり、部分的に体験したりという活動を通して、「働くとはどういうことか?」を感じてもらうことが多いと思います。ですが、高校では、より具体的に、職場の空気や仕事のやりがいを感じられるような「インターンシップ」を活用する学校が増えています。

インターンシップはキャリア教育にとって重要な役割を担う活動です。平成23年の中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」では、インターンシップ(就業体験活動)について次のように示しています。

「第三に,卒業生・地域の職業人等とのインタビューや対話,就業体験活動等の体験的な学習の機会を,計画的・体系的なキャリア教育の一環として十分に提供し,これらの啓発的な経験を通して,進路を研究し,自己の適性の理解,将来設計の具体化を図らせることである。具体的に人や現場を通して,自己と社会の双方についての多様な気付きや発見を経験させ,自らの将来を考えさせることが効果的である。」

就業体験を行う活動については、専門学科では多く行われていますが、普通科ではほとんど行われてきませんでした(平成22年度の調査では普通科のインターンシップの実施率は16.7%)。ですが、職業への意識が薄くなっている現代は、普通科の生徒にもインターンシップの必要性が指摘されています。

実際にインターンシップを実施している普通科高校では、キャリア教育の取り組みの中でインターンシップが最も人生に影響を与えたというアンケート結果も出ています。保護者や教員が教えられない、「社会で働くことの意味や厳しさ、楽しさ」を体感することは、生徒の職業観に大きな影響をもたらすものなのです。

効果的にインターンシップを実施するには、3年間を見通したプランニングが不可欠。一連のキャリア教育の中でインターンシップがどのような目的を持つのか、学校内で言語化しておくことは、生徒の学びを深めるうえで重要です。

また、受け入れを依頼している企業と学校とで、「何を学ばせたいか?」を共有しておかないと、企業側も何をやらせていいのかわかりません。企業にとっても生徒にとっても充実した取り組みになるように意思疎通をしっかりと行っておきましょう。
さらに、単発のイベントで終わらせないためには、事前・事後の指導も欠かせません。事前指導では、生徒たちにもインターンシップの目的を伝え、「社会人になるとはどういうことか」という認識の浸透やマナーやルールを指導。事後指導では、感想文や感謝状を書いて終わりとはせず、キャリアカウンセリングの際の材料とし、生徒に今後の方向性や進路選択のための行動を考えさせるなど、アウトプットの機会を与えましょう。
 

4.まとめ  ―  目に見えない成長をいかに促せるかが勝負

キャリア教育の成果は、教科指導と違い、知識やスキルという目に見えるかたちで表れるものではありません。生徒によっては、力を尽くしてキャリア教育を施しても、学校生活の中では答えが出ず、やりたいことがはっきりしないまま卒業していく生徒もいるでしょう。

ですが、目先の受験だけにフォーカスするのではなく、いつか生徒自身が自分の道を見つけられると信じ、できる限りの取り組みをしていくことが大切ではないでしょうか。

今後、大学入試改革が行われ、大学側も求める力が変化していきます。キャリア教育を通して、これから求められる思考力・判断力、人間性など、総合的な人間力が必要となることを、生徒自身が実感できることが鍵となるでしょう。

平成28年の答申では「キャリア・パスポート(仮称)」という日々の活動や学びのポートフォリオ的な教材も提案され、今後さらにキャリア教育の取り組みが広がることが予想されます。

教員にとっても、生徒・保護者にとっても答えのない、ある意味では忍耐力を要する活動ですが、そこでどれだけ深い学びを得られるかで、その生徒の見る将来の明るさが変わるのです。そのため、学校、そして教員に期待される役割はとても大きいものとなっています。

 

※参考資料
キャリア教育手引き(高校)
今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)

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