2016.01.21 先生向けコラム ペップトークで子どもの自己肯定感を育てる

岩﨑 由純 さん

最近の子どもの傾向として、将来の夢がなく自分に自信がない、という声がよく聞かれます。子どもたちの自己肯定感をいかに高め、やる気にさせるか。肯定的な言葉掛け「ペップトーク」を通じて活動を行っている岩﨑由純さんに話をうかがいました。

減点評価ではなく「できたところ」を承認する

2. ペップ岩崎氏 「言葉」というのは、子どものやる気を引き出し、前向きな心を育てる上で、とても大きな力を持ちます。周りの大人たちがどんなふうに声掛けするかによって、その子の可能性や自己肯定感が大きく変わっていくと感じています。

 これまでの日本の教育というのは、○×式の評価でした。できていない×のところにフォーカスして「ここができていない」と指摘する。人間誰だって得手不得手があります。べつに100点じゃなくてもいいのに、完璧じゃなくていいのに、減点評価される。それによって子どものやる気が続かなくなっていきます。まずは、できている部分を「できたね」と評価して、承認することが大切です。

 その際の声掛けも、否定質問から肯定質問へ、言葉を変えるだけで伝わり方がまるで違ってきます。たとえば、「どうしてできないの!」を「どれだけできる?」に変えてみる。「なんでわからないの!」を「どこまでわかった?」に変えてみる。

 見方を変えれば、できていないところがその子にとっての「伸びしろ」なわけですから、「できてない!」と叩くのではなく、「そこを教えるよ」でいいんですね。

子どもの「現状」を正しく理解する

  今、学校現場でも「キャリア教育」が盛んに導入されつつあります。大人たちは子どもに自覚を促すつもりで、「将来の目標をしっかり持て」と言ったり、逆に夢に対して「もっと現実を見ろ」とか言ったりしますね。しかしながら、中学生、高校生の段階では、まだ具体的な見通しなどなくて普通です。導いているつもりが、逆に路頭に迷わせることにもなりかねません。その子の今の状態、現時点で何ができるのかがわかってはじめて目標が成立します。まず、その子の状況や心情を汲み取り理解しようとすること。求められるのは「斟酌力」と「傾聴力」です。指導者の先生方はこれらの力を高めて、子どもの自己肯定感を引き出す肯定的な「言葉磨き」をぜひ心掛けていただきたいと思います。

(取材/堀寿次)

 

プロフィール

岩﨑 由純3. ペップ岩崎氏
いわさき・よしずみ

1959年山口県生まれ。NECレッドロケッツ現コンディショニングアドバイザー。日本初の「アスレチックトレーナー」として、数々のスポーツ現場で活躍。アメリカ留学中に、ペップトークの迫力・想い・魅力を体感し、現在スポーツ・教育・ビジネスの世界に普及するため全国で講演会を実施中。日本コアコンディショニング協会会長、トレーナーズスクエア株式会社代表取締役社長、そして、日本ペップトーク普及協会代表理事を兼務し、幅広く活躍している。

 

「ペップトークとは?」

アメリカでスポーツ選手を励ますために指導者やリーダーが競技前に使う、“短い激励のメッセージ=やる気にさせる”声掛け。「短く」「わかりやすく」「肯定的に」「魂を揺さぶる」言葉を相手に投げ掛けることで、モチベーションをアップさせていく効果がある。自分や家族に対して、また教育現場や職場などで、コミュニケーション・スキルとして活用が広がりつつある。

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