2026.09.02 先生向けコラム ジェンダーレス制服・女子スラックス導入の課題とは?生徒の本音から考える「教室の空気」
近年、全国の中学校や高等学校で、女子スラックスや男女共通デザインといった「ジェンダーレス制服」の導入が急速に進んでいます。多様性に配慮した校則の見直しは、教育現場における大きなトレンドとなっています。
しかし、現場の先生方からは「導入したものの、実際に選ぶ生徒が少ない」「悪目立ちしてしまわないか心配」といった悩みの声も少なくありません。 制服という「ハード面」の選択肢を用意するだけでは、生徒は安心して自分らしい制服を選ぶことはできないのでしょうか。
本コラムでは、カンコー学生服が実施した「高校生500人調査」のデータ、そしてアンケートに寄せられた生徒たちの「リアルな生の声」から、制服見直しのその先にある課題と、解決の鍵となる「教室の心理的安全性」について見ていきます。
目次
1. データで見る:「制服の選択肢」と「教室の空気」にあるギャップ
2026年7月に全国の高校生500人を対象に実施した調査では、実に93.2%の生徒がジェンダーレス制服に対して「とても良い・良い取り組みだと思う」と回答しました。

また、73.4%の高校生が「自身の学校でスラックスを着用している女子生徒がいる」と答えており、生徒たちの間では「性別に関わらず生徒自身が希望するスタイルを選択できると」への理解が着実に広がっていることがわかります。

しかし、ジェンダーレス制服を前向きに受け止めている一方で、周囲の反応については慎重な見方をしていることが調査から見えてきました。
クラスで女子生徒がスラックス、男子生徒がスカートを着て登校する生徒がいた場合、周囲はどう反応すると思うかを聞いたところ、「最初は違和感があっても、見慣れると気にならなくなると思う(59.8%)」「本人の自由だから気にしないと思う(25.8%)」という前向きな回答が多く見られました。 その一方で、以下のような懸念の声も一定数存在しています。
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「クラスの中で少し浮いてしまうと思う」:18.4%
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「めずらしがって、ジロジロ見ると思う」:14.4%
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「クラスやSNSなどで、陰口(うわさ話)を言われると思う」:8.6%
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「いじめにつながる(いじめられる)と思う」:5.4%
この結果から、制度への理解そのものは進んでいる一方で、「浮いてしまうのではないか」「陰口を言われるのではないか」といった「教室の空気」に対する不安が、生徒が自分らしい選択をする際の心理的なハードルになっている可能性がうかがえます。

2. 生徒の「生の声」から見えた、選択をためらう3つの葛藤
アンケートの数値にも表れた「教室の空気」に対する不安。では、生徒たちは具体的にどのような視線や反応を気にしているのでしょうか。
高校生へのアンケート調査に寄せられたフリーコメント(自由記述)を読み解くと、制度の導入だけでは解決しきれない、よりリアルな生徒たちの葛藤が見えてきました。
①「実用性」で選んだつもりが「カミングアウト」と誤解される怖さ
防寒対策や自転車通学のしやすさといった実用的な理由でスラックスを選びたい女子生徒がいても、周囲からの見られ方を強く気にしていることがわかります。
「女子がズボンを着用していることで『あの人は心は男の子なんだな』という、本来そうではないのに勘違いが生まれるということもあると思う。なので、良い考えではあるけれど少し難しいとも思う」
「ジェンダーレスを求める人間が可視化されることで、暗黙の差別が発生する可能性がある」
「スラックスを着用=LGBTQ当事者である」と過剰に結びつけられてしまうリスクを感じ、選択をためらう生徒がいると考えられます。
②「制度」と「教室の文化」のズレ
ルール上はOKになっていても、学校の文化や周囲の認識が追いついていないことへの不安の声も上がっています。
「女性がズボンを履いてるのは違和感ないけど、男性がスカートを制服で着ているのは見ないし、まだそういうのは文化として馴染んでない。周りの目を気にして着られないならジェンダーレスにする意味がない」
③ 浮くことや陰口への不安
今回の調査でも、クラスで性別に関わらず生徒が着たい制服(または「女子のスラックス」「男子のスカート」を着用する)の着こなしをする生徒がいた場合、「クラスの中で少し浮いてしまうと思う(18.4%)」「陰口を言われると思う(8.6%)」といった懸念の声があがっています。
「良いとは思うが、実際に着て変に思われるかもしれないと思った」
「制度としては賛成だが、結局のところ目立ってしまうのが怖い」
これらの声から見えてくるのは、「制度(制服の選択肢)」が整うことと、「安心して選べること」は決してイコールではないという現実です。
3. 「教室の空気」を変える鍵は、学校全体での多様性教育
周囲の目を気にして自分らしい選択ができない環境は、教育現場で近年重視されている「教室の心理的安全性」が担保されていない状態とも言えます。生徒同士がお互いの違いを認め合い、誰もが特別視されることなく自然に振る舞える「空気づくり」が、制服見直しの次の一手となります。
では、性別に関わらず生徒自身が希望するスタイルを選択した場合の周囲の反応は、ネガティブなものなのでしょうか。学校調査で興味深いデータが出ています。
カンコー学生服が別途実施した教員1,077人対象の調査において、男子生徒のスカート着用が実際にみられる学校の先生に周囲の反応を聞いたところ、約7割が「周囲の生徒は受け入れている」と回答しました。
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つまり、「当たり前の空気」が醸成されると、生徒たちが多様性を柔軟に受け入れていく傾向にあると考えられます。
そして、その空気を作るための手立てを生徒自身も求めています。 今回の高校生500人調査で「安心して自分の着たい制服を選べる学校にするために必要なこと」を聞いたところ、半数以上(51.8%)の生徒が「LGBTQや多様性に関する正しい知識を学ぶ授業」と回答しました。
制服の規定を変更して終わりにするのではなく、総合的な探究の時間やホームルームを通じて、多様性について学校全体で正しく学ぶ機会を作ることが、生徒の心理的負担を減らす最短のルートと言えます。
4. 制服の「選択」を支える、カンコー学生服のサポート体制
カンコー学生服は、制服をつくることだけではなく、「子どもたちと学校を取り巻く社会課題を解決する」ことを目指しています。 多様性を尊重した学校環境づくりにおいて、ハード面(制服や校則)とソフト面(教育や相互理解)の両輪から先生方をサポートいたします。
【学校全体で正しい知識を学ぶために】LGBTQ・性の多様性に関する講演会
生徒たちが互いの違いを認め合い、心理的安全性の高い学校を作るためには、正しい知識が不可欠です。カンコー学生服では、当事者の方や専門家による、生徒・先生・保護者の方を対象にした講演会や出張授業を行っています。
▼多様な性のあり方への理解を学校全体で深めるプログラムの詳細は、こちらをご覧ください。
【制服や校則の見直しについて】
「これからジェンダーレス制服の導入を検討したい」「生徒会主導で校則の見直しを進めたいが、他校の事例を知りたい」といった先生方の悩みにも寄り添い、最適なご提案をいたします。
▼制服の見直し等に関するご相談はこちらから
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