2012.10.30 カンコーホームルーム 【Vol.81】「子どもの体力・運動能力向上のための取組み」

文部科学省の「体力・運動能力調査」によると、子どもの体力・運動能力は、昭和60年(1985)年から長期的な低下傾向が続いていましたが、近年、低下傾向に歯止めがかかり、横ばいまたは向上がみられるようになりました。その背景には、子どもの体力・運動能力の向上を目的に様々な取組みが学校で行われているようです。今回は、全国の小中高校の教職員を対象に、子どもの体力・運動能力低下を感じる度合いと、諸施策についてうかがいました。

調査概要

  • 調査対象:全国の小中高校の教職員 2,200人
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 実施時期:2012年7月

子どもの体力・運動能力低下を感じる度合い

生徒・児童の体力・運動能力の低下を感じることが「ある」という回答は、小学校86.5%、中学校83.4%、高校77.8%と、小学校で生徒・児童の体力・運動能力の低下を感じることが最も多くなります。

【図1】最近、生徒・児童の体力・運動能力の低下を感じることはありますか?
(単数回答)

子どもの体力・運動能力向上のための取組み

子どもの体力・運動能力向上のために学校が行っている取組みは、小・中・高校全体では、「朝のランニング活動」(小学校/公立・富山)や「校内マラソン大会」(中学校/公立・鳥取)、「体育の時間に頻繁にランニングを行っている」(高校/公立・青森)といった「走る」運動が多く、「柔軟体操」(小学校/公立・広島)や「ラジオ体操の積極的な採用」(高校/公立・宮城)、「部活動で体幹トレーニング」(中学校/公立・大阪)などの「体操」も、小・中・高校に共通して広く行われているようです。また、体育の授業以外に「朝」や「休み時間」、「クラブ・部活動」などで運動する機会を積極的に取り入れている学校も多く、「車での登下校の送迎を控えるよう、保護者への呼びかけ」(中学校/公立・鹿児島)、「階段を利用させる」(高校/私立・埼玉)など生活指導を行う学校もありました。

◆小学校

  • 朝のランニング活動(公立・富山)
  • 休み時間のマラソン(公立・埼玉)
  • 冬場にマラソン大会をしている(公立・大阪)
  • 年間を通して、持久走・縄跳び運動に取り組んでいる(公立・青森)
  • 朝の縄跳び教室(公立・埼玉)
  • 朝の縄跳び、縄跳び検定(公立・北海道)
  • 縄跳び板の設置(公立・滋賀)
  • 長縄跳び大会(公立・静岡)
  • 体幹を意識した短い体操、学校独自の体操(公立・兵庫)
  • 柔軟体操(公立・広島)
  • 全市で水泳に力を入れている(公立・大阪)
  • 鉄棒や登り棒など腕の力を鍛える運動(公立・大阪)
  • ドッジボール大会(公立・兵庫)
  • スポーツテストの分析、それをもとにした授業設計(公立・京都)
  • 昼休みを長くする日を作る(私立・愛知)
  • 休み時間の外遊びの推奨(公立・山梨)
  • 休み時間を長くする(公立・熊本)
  • 手をつく運動をできるだけ多く取り入れている(私立・東京)

◆中学校

  • 校内マラソン大会(公立・鳥取)
  • 部活動合同の朝ランニング(公立・宮城)
  • 週1回、放課後10分間走っている(公立・鹿児島)
  • 体育での持久力向上の授業(公立・神奈川)
  • 全校体育(公立・長崎)
  • 昼休みに運動場でボールなどの貸し出しをして、スポーツをする時間にしている(公立・愛知)
  • 昼休みに生徒対教師で球技大会をしている(公立・神奈川)
  • 登山などの野外活動(公立・宮城)
  • 部活動の活性化(公立・高知)
  • 部活動に全員入部すること(私立・神奈川)
  • 部活動で体幹トレーニング(公立・大阪)
  • 部活動で体幹を意識した運動(公立・長野)
  • 1月に必ずスポーツ大会を行っている(私立・京都)
  • ヨガ(公立・群馬)
  • 基礎体力テストを実施している(公立・石川)
  • 体育的行事を他校よりも多く設定している(公立・愛媛)
  • エレベータを使わないで階段を使わせる(公立・神奈川)
  • 車での登下校の送迎を控えるよう、保護者への呼びかけ(公立・鹿児島)

◆高校

  • 毎年1回マラソン大会がある(公立・三重)
  • マラソン大会をやってそれに向けての練習をする時期がある(私立・兵庫)
  • 希望者のみ朝マラソン(私立・東京)
  • 体育の時間に頻繁にランニングを行っている(公立・青森)
  • 持久走を多めに取り入れている(公立・福島)
  • 毎時間のトレーニングとランニング(公立・兵庫)
  • 体幹トレーニング(私立・宮城)
  • 体幹を鍛えるようなトレーニングをいろんな部活動が取り入れている(公立・新潟)
  • 誰にでもできる競技を多く取り入れた体育の授業(私立・栃木)
  • スポーツテストの実施(私立・埼玉)
  • 全員参加の球技大会(公立・青森)
  • ラジオ体操の積極的な採用(公立・宮城)
  • 柔軟体操・バランス体操を取り入れる(私立・兵庫)
  • 部活動の加入率を上げる(公立・北海道)
  • 部活動の奨励(公立・福岡)
  • スポーツクラブの充実(公立・和歌山)
  • 遠くまで歩いていく遠行を行っている(公立・鹿児島)
  • 階段を利用させる(私立・埼玉)
【表1】子どもの体力・運動能力向上のために学校で取組んでいることは?(複数回答)

子どもの体力・運動能力低下の原因は、外遊びや運動をする機会の減少、生活様式の変化により日常的に身体を動かすことが少なくなったことが要因として考えられています。
今回の調査では、全国の小中高校の教職員の印象として、生徒・児童の体力・運動能力の低下を感じることが「ある」という回答は、小学校86.5%、中学校83.4%、高校77.8%と多く、体力・運動能力の低下傾向に歯止めがかかったとは言え、完全に改善されたとは言えないようです。こうしたことから、子どもの体力・運動能力向上のために学校が行っている取組みとしては、マラソン・ランニングなどの「走る」という運動や、ラジオ体操や柔軟体操、体幹トレーニングなどの「体操」が多くみられます。この2つは特別な施設や用具などがなくてもできて、誰でも参加できる運動・体力づくりといえます。また、体育の授業内容の工夫以外にも、「朝や休み時間」の活用や「クラブ・部活動」を推奨するなど、運動を日常的に取り入れることで定着化を図ったり、「車での登下校の送迎を控えるよう、保護者への呼びかけ」や「階段を利用の推奨」など生活面から改善を図ったりするなど、学校と家庭との連携も功を成しているようです。

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