2017.04.17 キャリア教育 先生たちでつくる私設研究会「京都キャリア教育研究会」
「京都キャリア教育研究会」は京都府宇治市の先生たちが中心となって発足した私設研究会。会長の菊井雅志先生をはじめ、若い教員を中心に、大学から小学校まで約15校40人が参加。先生たちが抱える「多忙」や「不安」などさまざまな課題と向き合い、先生自らアクテイブ・ラーニングを実践しています。
草の根活動で現場から情報発信
京都キャリア教育研究会 会長
菊井 雅志先生
私も以前は「キャリア教育=職場体験」という誤った認識でしたが、2013年に教育研修センター主催で行われたキャリア教育指導者養成研修を受講した際、「子どもの将来を思い描いて、その目標に向かいどのように導くのか」というキャリア教育の根本を知り、感銘を受けました。当時、学年主任として進路指導に携わっていた私は、子どもたちには自分の意志で進路を決める自信を持ってほしいと考えていました。自分が目指しているものはキャリア教育ではないか、それが研究会を立ち上げたきっかけです。
研究会の主義は「草の根活動」。トップダウンでなく現場に原動力があるので、参加している先生たちのモチベーションは高く、現場からキャリア教育を発信すんだと意気込んでいます。小中高の先生だけでなく、大学の教員、将来教師を目指す教職大学院の学生も参加。時には教育界で有名な方を講師に招くなど、先生たちが刺激を与える場としても活用しています。
部会運営は部会長に任せており、テーマは先生たちの興味のあるものや、それぞれが教育現場で感じる「不安」など。不安や悩みは誰でも抱えているものなので、それをみんなで目を向けて考え共有することは、解決のヒントを導き出すことにつながります。また悩んでいた先生自身も救われると思っています。
特に若い先生は、何か分からないまま目の前の仕事に追われ、頑張っているのに充実感が少なく、不安もたくさん抱えています。そういう状況では、子どもの将来を思い描くことは難しいでしょう。学校内でのヨコのつながりを強めていくことはもちろん、校種を超えて子どもたちの成長を見守るタテのつながりも大切だと考えています。
キャリア教育は外部連携が大切だと思われがちですが、学校内で子どもをどのように育てたいかという意識が核としてあることが最も重要。先生たち自身も「子どもをどのように導いて行きたいか」という目標があれば、それに向かって指導ができ、目標に近づいていくことで、充実感を得られると思います。私たちはそういった意識を各学校の中で醸成していきたいと思っています。
今はまだ「京都」の中での見方で研究をしていますが、この活動が他の都道府県にまで広がって、地域をまたいだ交流ができることが私の理想です。今後も研究会がいろんなことを発信することで、先生たちが自由な発想ができるようになってほしいですね。
研究会を通じ、やりがいを実感
京都キャリア教育研究会
組織・多忙部会 部会長
吉岡 稜太先生
現在、「組織・多忙部会」の部会長を務めています。研究会に入ったのは菊井先生に憧れてです(笑)。実は菊井先生は私が中学生の時の担任の先生でした。部会長として、いざ多忙について考えてみてもなかなかテーマが定まらず、菊井先生に相談したところ「自分らしく楽しく働ければ、多忙でも“多忙”と感じなくなるのでは」とアドバイスをいただき、「多忙感」をテーマに研究を始めました。
私は小学校教諭なので、専門外の教科も教えなければいけません。苦手意識を持つ教科があればなかなか授業の見通しも立てにくく、それが負担となって多忙感にもつながっていると思います。そこで自分の専門である保健体育で、水泳の系統表を作成することに。中学校に進学するまでにできるようになってほしい目標を明記することで、体育が苦手な先生でも指導の見通しが立てられるように配慮しています。系統表を作ることで、自分がどのようなことを考えて、教えようとしているのか、他の先生方にも共有してもらいたいという思いもありました。
今後、体育だけでなく、国語や算数といった教科でも系統表を作成し、多くの先生が見通しを立てながら子どもたちを指導できるようにしていきたいと思っています。
私自身この系統表を作っているときは、子どもたちが上達していく姿を思い描け、楽しく充実感でいっぱいでした。また自分自身、指導をする上で整理ができ、多忙の中でも余裕を持って働けるようになり、意欲にもつながっています。
やりがいを持てれば、忙しくても目標に向かっている充実感を得られる、部会活動を通じて、学んだことが実際の現場でも活かせるように取り入れていきたいです。私自身多忙でスケジュールをまだうまく管理できていませんが、研究会活動もしっかり続け、仕事との両立を図っていけるよう努めていきたいです。
活動紹介
同研究会には「組織・多忙部会」「意欲向上部会」「コミュニケーション部会」「積極性向上部会」の4つの部会があり、仕事の合間をぬって会合を実施しています。また夏と冬の年2回、研究大会を開催し研究成果を発表。今後はこれまでの総括や見直しを行い、次期の取り組みを再検討します。
研究会での検討事項を学校に導入する際は、管理職の承認を得て行い、年に1回活動紀要を作成し、報告も行っています。
活動事例
・職員室内の人間関係・チームワークについて考える研究では、参加者が所属する学校で検討事項を導入。先生間のコミュニケーションが図られたことで、生徒指導や教育相談などの担当教員の連携が強化され、生徒指導数が大幅に減少した。
・京都エリアに昔から推奨されている泳法「ドル平」(平泳ぎとドルフィンキックを合わせた泳法)の研修会を実施。「ドル平」の指導に不安を感じていた先生もいたが、指導方法やその有用性を学校内で共有でき、不安が解消できた。
ロゴマーク
「キャリア」の由来である「荷台」をモチーフにしたロゴマークには、子どもたちが自分の人格や選び抜いたものを載せ、自ら運んでほしいという期待が込められています。また星をかたどった車輪は教員を表し、子どもたちを支えながら、彼らの「星」でありたいという思いを込めています。
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