2017.04.08 先生向けコラム これからの教育改革を読み解く 「大学入学者選抜改革の方向性」

新学習指導要領の改訂や大学入試制度の改革など、2020年に向けて戦後の日本教育界の大転換期ともいえる教育改革が進んでいます。今回はその中でも重要なポイントの一つである「大学入学者選抜改革」について、ご紹介します。

大学入学者選抜改革の方向性

子どもたちが新たな時代を生き%e5%85%a5%e8%a9%a6%e6%94%b9%e9%9d%a9%e5%85%a8%e4%bd%93%e5%83%8fていく上で必要となる資質・能力の育成に向けた教育改革を進めるに当たり、「知識・技能」だけでなく、それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」が重要とされています。

このような中で、子どもたちのキャリア発達を図りながら、小・中・高・大学と継続性を持って育んでいくことが求められています。現在、文部科学省を中心として、「高等学校教育改革」、「大学入学者選抜改革」、「大学教育改革」を総称した「高大接続改革」が進められています。2016年8月に文科省から発表された「高大接続改革の進捗状況」によると、各選抜試験では、以下のような案をベースに今後、さらなる検討が進められていくようです。

注)アドミッション・ポリシー(入学者受入方針):各大学が,当該大学・学部等の教育理念などに基づく教育内容等を踏まえ、入学者を受け入れるための基本的な方針であり、受け入れる学生に求める学習成果を示すもの。

 

「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を導入

高校生の基礎学力の定着度の把握することによって、生徒の学習意欲の喚起、学習改善を図るとともに、指導改善等に活用することを目的としたテストです。大学入試へは、調査書への結果記入など、あくまで高校の学習成果を把握するための参考資料として活用されることが想定されています。

【ポイント】

・基礎学力の定着具合を把握し、指導に活用することが目的(平成31年から試行実施、平成35年から本格導入予定)
・基本的に各学校や設置者の判断により利用することが想定

 

共通テストとして「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を導入

現在のセンター試験に代わるものとして想定されているテストです。「知識や技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」が総合的・多面的に評価できるよう、教科横断型の設問や、マークシート式問題の改善、記述式問題の導入などが検討されています。

【ポイント】

 ・「教科型」、「合教科・科目型」、「総合型」の問題を出題、段階別成績表示
 ・マークシート式だけでなく、記述式も導入(平成32年から段階的に導入予定)
 ・希望者に挑戦の機会を与えるため、年複数回実施(※1)
 ・CBT方式(※2)での実施を前提に検討・開発
※1)実施回数や実施時期は、高等学校教育への影響を考慮しつつ、高校・大学関係者を含めて協議予定
※2)コンピュータ上で実施する試験

 

各大学のアドミッション・ポリシーに基づく多面的・総合的な個別入学者選抜試験への転換

現在、各大学で実施されている個別入学者選抜試験は、各大学のアドミッション・ポリシーに基づいて、多様な背景を持つ高校生一人一人が高等学校までに積み上げてきた様々な経験・能力を多面的・総合的に評価できるものへと転換していきます。

【ポイント】

・調査書の見直し(高校時代の学習や活動の履歴をより多様で具体的な内容で記載)
・推薦書の見直し(志願者の学習や活動成果を踏まえ「学力の3要素」に関する評価を記載)
・志願者本人が記載する提出書類(意欲的に取り組んだ活動の報告書、志望理由書、学修計画書など)

 

「何をどのように学んだか」、「どんなキャリアを描くのか」

改革後の大学入学者選抜は、こ%e5%a4%a7%e5%ad%a6%e5%85%a5%e8%a9%a6%e8%a9%95%e4%be%a1%e9%a0%85%e7%9b%aeれまで以上に「思考力・判断力・表現力」が重視され、高校時代の活動や適性、意欲等を総合的に評価していくという方向性が示されています。特に各大学の個別入学者選抜試験では、入学者受入方針に基づく多面的・総合的な評価への転換が示されており、生徒たちが在学中に「何をどのように学んだか」、それらの体験値を踏まえて「どんなキャリアを描くのか」を自ら語り、記述できることが重要になってくると考えられます。

ここでポイントとなるのが、「キャリア教育」であり、次期学習指導要領でも活用検討が示された「キャリア・パスポート(仮称)」(※3)です。自分が設定した目標を元に、見通しを立てて学習や活動に取り組む、また、その体験で得た気づきを蓄積し、“見える化”して振り返る、これらを習慣化していくことが、自分の価値や体験を相手に伝える訓練となります。部活動やボランティア活動など、日々の身近な活動から少しずつ積み重ねていくことが大切ではないでしょうか。

※3)学びの履歴を積み重ねていくことによって、子どもたちが過去の履歴を振り返ったり、将来を考えたりしていくことを支援していく教材。

 

参考:高大接続システム改革会議「最終報告」平成28年3月、文部科学省「高大接続改革の進捗状況について」平成28年8月、中央教育審議会 答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」平成28年12月

 

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【 カンコー学生服が開発した生徒向け手帳は、キャリア・パスポート(仮称)としても活用いただけます】

 

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