2016.01.21 学校革命 「日本人としての『倫理・道徳教育』で生徒募集・学力向上に効果」学校革命

学校法人 森教育学園
岡山学芸館高等学校・清秀中学校高等部
森 靖喜 理事長

海外留学を主体とした「英語教育」と、日本の伝統的な教育に立ち返った「人づくり」。2本立ての取り組みで学校改革を成功に導いた森理事長に話をうかがいました。

 


理事長小本校は平成になって学園改革が軌道に乗り、今では国公立大学や有名私立大学の進学実績を上げられるようになりましたが、学校に着任した当初は、入学者の確保も難しい状況でした。特徴のない私立高校は偏差値の低い底辺校からつぶれていく…、そんな危機感を募らせていました。

 もともと本校は単独校でしたから、人材力も資金力もありませんでした。改革を断行するにも一度になにもかも変えるのは不可能です。まずどこか一点を突破口に切り拓けるところはないか-。その切り口になったのが「英語教育」でした。

 

一点突破による改革

本校は、先代である私の父が旧制中学の英語の教師をしていたこともあり、昭和41年にすでに私立としては珍しく「英語科」を設けていました。私立高校の中では全国初です。

 「これからの英語は、これまでの読解力だけではだめだ。読んで書いて話せる、バランスのとれた発信力が必要になってくる」。それが初代理事長であった父の考えでした。明治・大正・昭和の英語教育は西洋文明を輸入するためのもの、すなわち原書を理解するための読み書きの習得を中心としたものでした。しかし日本の思想や技術が世界のトップレベルとなった今日、日本の技術や文化は海外にどんどん輸出されるようになってきました。先代が予見したように、これから先ますます必要となるのは、世界に向けて発信できる英語力です。そういう意味では、先代には先見の明があったと思いますね。

英語科全員に海外留学を実施

選ばれる高校の最大の条件は大学への進学実績です。もともと英語科には比較的優秀な生徒がいましたから、そこから進学実績を作っていこうと思いました。英語科のレベルを短期間で引き上げるため、それまで1~2名だった海外留学を英語科の生徒全員に実施。オーストラリアやカナダの高校と提携しクラス全員の留学制度を設けました。実際、一年間の海外留学体験で、生徒の英語力は飛躍的に向上しました。ICUや上智大学に合格する卒業生を輩出することができ、英語科の入学希望者も次第に増えていきました。TOEICが800点以上という、一流企業のビジネスマン並みの英語力を有する生徒も今では16名を数えます。

「志」高き人間教育

5. 岡山学芸館(学校)英語科の改革に続いて行ったのが教員の意識と行動の改革です。地方の私立高校の地位は低く、公立に入れなかった生徒のための“補完校”という位置づけでしかありませんでした。

 その認識をどう打ち破るか。私立高校に出来て公立高校に出来ない、日本人としての倫理観や道徳観、善悪や美醜の感性を養う“人づくり”に切り込んでいきました。早寝早起き、あいさつ、マナーなど、公立学校では踏み込めないいわゆる「躾」教育です。生徒個人の判断にまかせるのではなく、一定のルールを設け、破った生徒には毅然とした態度で処する“ゼロ・トレランス方式”、さらには“七つの習慣J”も取り入れました。実はこの2つはいずれも規範意識を育てる日本の伝統的な教育スタイルといえるものです。

 見方を変えれば、私立学校は日本人の価値観や歴史観に基づく伝統的な教育ができる。その理念を教員にしっかりと伝えることで、使命感や意欲を育み根付かせていきました。

 そしてなにより重要なことは、こうした本校の教育方針を保護者や地域の方に理解し賛同していただくことです。学校行事を土日に開催したり、「親学講座」を開講し、学園運営を地域で盛り立てていただけるよう協力を仰ぎました。そのような改革を継続していくことで、本学の教育理念に共感し入学を志願する生徒も増加していきました。

 どれだけ知識や技術を詰め込んでも、教育の原点はやはり「人づくり」です。人としてあいさつがしっかりでき、礼儀正しくふるまえるよう、キャリア形成の根幹をなす「人間力」を根気強く育てていきたいと思っています。

(取材/川田達彦)