多様な子どもたちを包み込む

多様な子どもたちを包み込む
「ダイバーシティ制服」

2022.05.10

現代社会においては、性別・年齢・国籍・人種・体型・障がいの有無はもちろん、ひとりひとりの多様な価値観や生き方も個性として尊重される時代になりました。現在、そのような多様な個性を受け入れ、その個々をいかし合うダイバーシティ&インクルージョン(※1)な社会を醸成することが求められています。

 

※1ダイバーシティ&インクルージョン
「多様性」を意味するダイバーシティと「包摂」を意味するインクルージョンを合わせた語で、性別や年齢、国籍、人種、職歴、障害の有無など、目に見える違い/見えない違いが受け入れられ、その個々をいかし合う考え方。

学校におけるダイバーシティ&インクルージョン。

多様な価値観や生き方も個性として尊重される現代社会において、昨今、特に注目をされているのは「性の多様性」に関する内容です。しかし、多様性とはそれだけではありません。

例えば、年齢や体型もその1つで、他には人種、宗教、障がいなどがあります。そのような多様な個性を受け入れ、その個々をいかし合う社会を醸成することが重要です。

 

それは、1つの小さな社会コミュニティである学校においても重要な課題となっています。文部科学省では、学校で学ぶ子どもたちの多様化を指摘しています。(図1)このような背景を受け、学校教育においては、子どもたちが自分の良さや可能性を認識し、共に尊重し合いながら学ぶことのできる環境づくりや、ひとりひとりの個別の教育的ニーズを満たす必要があると示しています。

 

図1
学校における多様な児童・生徒の様相

子どもたち自身に楽しい学校生活を送って欲しいという想いから、カンコーでは学生服の製造当初より、子どもたちの個々の多様性に対して要望をくみ取り、ものづくりに反映してきました。

カンコーではダイバーシティ&インクルージョンの考え方のもと、全ての子どもたちの多様性を包み込める「ダイバーシティ制服」を展開しています。

カンコーの「ダイバーシティ制服」の事例。

「ダイバーシティ制服」とは、年齢・性別・国籍・障がい・体型・宗教・価値観など、すべての子どもの個々の違いを包含する制服です。多様性を認め合う学校環境を目指すため、今回は「ダイバーシティ制服」の中でも、「着脱しやすい仕様」「肌への刺激が少ない素材」「宗教習慣に配慮したデザインの制服」を紹介します。

 

子どもたちの中には、制服の着脱や着用に関する特有の悩みをもつ方もいます。

カンコーでは、着用する子ども本人や保護者の方のご要望に応じて、悩み・不安を軽減できるように工夫した制服を製造しています。

 

■着脱のしやすい仕様

例えば、手先の細かい動作が難しい方には、ブレザーなどの上着の前合わせを開閉しやすい面ファスナーの仕様に変更します(図2)。また、下半身の動作が難しい方には、スラックスなどが着脱しやすいように、ウエスト部分をゴム仕様にします(図3)。上半身を自身で動かすことのできない方には、背中の上から下にかけてファスナーで大きく開閉できる仕様にすることで、着脱介助がしやすいよう工夫する場合もあります(図4)。

 

着脱や着用時の悩みは子どもたちそれぞれにあるため、その悩みの解決にはひとりひとりの状況に応じたものづくりが必要です。例えば、車椅子を使用する子どもの制服としてつくる場合にも、全く同じ設計は存在しません。車椅子に着座したときの身体の状態に合わせて着丈を調整するなど、その子どもそれぞれに合ったものづくりをおこなっています。

 

これらの仕様を施してつくられた制服は、「みんなと同じ制服を学校で着たい」という子どもたちの気持ちを反映して、外観は同じになるように工夫します。例えば、背中に使用しているファスナーは、柔らかいものを使用しているため着心地を阻害せず、また外側から見ても目立たないものを使用しています。

図2
前合わせの面ファスナー仕様
図3
ウエストゴム仕様
図4
背中ファスナー仕様

肌への刺激が少ない素材

肌に触れる素材によって、強い刺激を感じたり、アレルギーが引き起こされる場合は、外観はそのままに、素材を変更して製造しています。例えば、制服には耐久性や機能性を高めるため、ポリエステルなどの合成繊維を使用している場合もありますが、その肌触りによって日常生活に支障が出る方には、肌に触れる部分を綿素材などへ変更します(図5)(図6)。綿素材を肌に触れる部分に使用することで、肌への刺激を抑え、肌の荒れやかゆみが軽減される方もいます。

図5
綿素材を使用したシャツ
図6
裏地に綿素材を使用したスカート

宗教習慣に配慮したデザイン

デザインによって着用時の課題を解決することもできます。

イスラム教においては、特に女性の肌・体型の過度な露出がタブー視される場合があります。

例えば、イスラム教を信仰する子どもには、肌・体型の露出を抑えたデザインも提案することができます。

図7
宗教習慣に配慮した学校制服の例

すべての子どもたちにとって快適なユニフォームを目指して。

カンコーの「ダイバーシティ制服」の一例として「性の多様性に配慮した制服」を中心に、これまで本研究所サイトでも紹介してまいりました。今回は視点を変え、「ダイバーシティ制服」の中でも障がいやアレルギー、宗教に配慮した制服の事例をご紹介しました。
わたしたちは、これからも可能な限り子どもたちの多様性に寄り添い、ダイバーシティ&インクルージョンの考えのもと、すべての子どもたちの多様性を包みこむ「ダイバーシティ制服」の更なる進化のため調査・研究・開発を進めていきます。

 

*学校関係者・保護者の皆様

今回ご紹介した仕様・素材・デザインの製品は、子どもたちひとりひとりに合わせて製造しているため、常備しているものではありません。製造に関してはご相談ください。

 

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