中高生1,000人調査

中高生1,000人調査
「今とこれからの制服価値」

2024.08.29

カンコー学生工学研究所では、カラダ・ココロ・時代・学びの4つの視点で、日々子どもたちの変化を調査・分析し、これからの制服の在り方について研究しています。近年、学校制服に求められる価値観の変容を背景に、多くの学校で制服のモデルチェンジが進んでいます。

カンコーは学生服に求める価値の変化を理解するために、前回ご紹介した2021年8月のアンケート調査は全国の公立中学校のみを対象に案内しご回答いただきました。今回の調査では、まずは生徒・保護者の制服に対する価値観がどのように変化しているのかを調査し、その結果を元に複数の学校様と意見交換を行いました。まずは生徒に対して実施したアンケート調査結果を紹介します。

 

 

調査の概要

全国の中学校・高校に通う生徒1,000人を抽出し、アンケートによる定量調査を実施しました。ここでは、アンケート調査の実施方法と設問内容を紹介します。

 

実施方法

今回実施した調査の概要は次の通りです。

【調査対象】

中学校・高校の生徒1,000人
【調査対象者の内訳-1(性別)】

男子:472人 女子:528人
【調査対象者の内訳-2(中学・高校)】

中学生:500人 高校生:500人
【調査対象者の内訳-3(公立・私立)】

公立:606人 私立:257人 わからない:137人
【対象エリア】

全国47都道府県
【実施期間】

2023年6月2日~6月21日

 

設問内容

アンケートでは「今、着用している制服について感じていること」と「今後、制服に期待していること」に関する質問をしました。質問は26項目設定して、それぞれに対する共感度を「あてはまる」「ややあてはまる」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の4段階から選んでもらう形式です。

 

調査結果-今の制服について感じていること-

今、着用している制服について感じていることの回答結果は下図の通りです。(図1)

“あてはまる”と“ややあてはまる”と回答した人の合計が大きかった項目は、上位から、毎日の服装選びに困らない(84.2%)、統一感があるように見える(82.2%)、学生の象徴である(80.9%)、丈夫で長持ちする(80.9%)、貧富の差を目立ちにくくする(79.1%)でした。
ほぼすべての項目で、“あてはまる”と“ややあてはまる”の合計が“あてはまらない”と”ややあてはまらない”の合計を上回っていましたが、「自分らしさを表現できる」だけは下回る結果となりました。

図1
あなた自身が今着用している制服について伺います。 以下の項目について、近いと思うものをそれぞれひとつだけお答えください。

調査結果-今後の制服に期待していること-

今後、制服に期待していることについて感じていることの回答結果は下図の通りです。(図2)

“あてはまる”と“ややあてはまる”と回答した人の合計が大きかった項目は、上位から、毎日の服装選びに困らない(83.3%)、丈夫で長持ちする(82.4%)、統一感があるように見える(79.3%)、3年間着用できるため、私服よりも経済的である(78.8%)、学生の象徴である(78.7%)でした。

 

図2
今後あなたが制服に期待することについて、あてはまるものをお答えください。 以下の項目について、近いと思うものをそれぞれひとつだけお答えください。

続いて、“あてはまる”と回答したもののうち、特にこれからの制服に希望するものを、3つ選んでもらいました。

その回答結果は下図の通りです。(図3)

図3
前問で(今後あなたが制服に期待することについて)あてはまると回答したもののうち、特にこれからの制服に希望するものを3つまで選んでください。

男女別で最も大きな差が出た項目は、「おしゃれなデザインである」でした。女子が1位だったのに対して男子は5位で、16.8%の差が出る結果となりました。(図4)

全体で7位だった「自分らしさが表現できる」、9位だった「自分に自信が持てる」は、男子の10位以内には入りませんでした。

 

図4

中学生と高校生で最も大きな差が出た項目は、「誰にでも似合う」でした。中学生が3位だったのに対して、高校生は6位で、10.2%の差が出ました。(図5)

全体で7位だった「自分らしさが表現できる」、10位だった「式典や冠婚葬祭で着用できる」は、中学生の10位以内には入りませんでした。また、全体で8位だった「統一感があるように見える」は高校生の10位以内には入りませんでした。

図5

公立と私立で最も大きな差が出た項目は、「誰にでも似合う」でした。公立が4位だったのに対して私立は7位で、7.9%の差が出ました。(図6)

全体で8位だった「統一感があるように見える」は、私立の10位以内には入りませんでした。また、全体で9位だった「自分に自信が持てる」は公立の10位以内には入りませんでした。

図6

「特にこれからの制服に希望するもの」は、全体の結果と比較して、男子/女子、中学生/高校生、公立/私立、それぞれに違いがありました。これから学校制服のモデルチェンジが進むにつれて、制服の多様化が更に進む可能性があります。

 

これからの制服に対する期待度

「今の制服に感じること」「これからの制服に期待すること」の2つの調査で、“あてはまる”と“ややあてはまる”の合計の割合を比較しました。「これからの制服に期待すること」が「今の制服に感じること」より数値が高い場合、期待度が大きいとします。

今の制服の価値よりも高い結果が出た項目は、上位から、自分らしさが表現できる(+23.0%)、おしゃれなデザインである(+18.1%)、自分に自信が持てる(+16.1%)、地球環境に配慮している(+15.1%)、限られた期間にしか着られない特別感がある(+11.2%)でした。

今の制服の価値より低い結果が出た項目は、上位から統一感があるように見える(-2.90%)、学生の象徴である(-2.20%)、着用者を未成年として社会全体が見守ることができる(-2.10%)、学校への所属意識を育む(-2.10%)、流行に左右されないデザインである(-1.60%)で、あまり差が見られませんでした。

 

今の制服の価値とこれからの制服に期待する価値で生じている差を男女別で比較したところ、男女共に期待度が高かった項目は「おしゃれなデザインである」「自分に自信が持てる」「地球環境に配慮している」で15%以上の差となりました。男女で比較すると最も差が大きかったのは「自分らしさが表現できる」で、男子が16.7%だったのに対して女子は28.6%で、11.9%の差があり女子の期待度の方がより高い傾向がありました。

 

中学生と高校生で比較したところ、最も大きかったのは「学校の文化や伝統を象徴する」「気持ちの切り替えができる」「学校への所属意識を育む」で、それぞれで6.6%の差がありました。

 

公立・私立で比較したところ、最も大きかったのは「おしゃれなデザインである」で、公立が21.3%だったのに対して私立は10.9%で、10.4%の差がありました。他にも公立私立ともに期待度が大きい結果となったのは「自分らしさが表現できる」「自分に自信が持てる」「地球環境に配慮している」でした。

まとめ

「毎日の服装選びに困らない」「統一感があるように見える」「学生の象徴である」といった項目は、今とこれからで共通して高い結果となりました。これからの制服に対する期待度では、特に「自分らしさが表現できる」「おしゃれなデザインである」「自分に自信が持てる」「地球環境に配慮している」が新たな価値として期待されていることが明らかとなりました。

今回の生徒に対するアンケート調査の結果、学校制服がもつと考えられる価値は、今とこれからで変わらないものと、変わりつつあるものがあることがわかりました。

次回は保護者を対象としたアンケート調査の結果を紹介します。生徒に対するアンケート結果と同様に、学校制服に対して全体的に肯定的な意見が多い結果となりました。生徒の考えと、保護者の考えを比較しながら、一致している部分としていない部分について考えていきます。

 

(カンコー学生工学研究所 田中)

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