広がる女子のパンツスタイル。

広がる女子のパンツスタイル。
動きやすさが生む自分らしい学生生活。

2023.02.28

近年、LGBTQ※1や多様性への配慮をきっかけに、制服アイテムとしてスカートとパンツスタイル(スラックス)の選択制を導入する学校が増えています。

しかし、「周囲の目が気になる」「体のラインが強調される」などの理由から、スラックスを選びにくいという声も少なくありません。

カンコー学生工学研究所では、誰もが性別に関係なく着たい服を選べる世の中を目指し、女子特有の体型に合わせつつ、性差を感じさせない女子スラックス※2を提案しています。今回は、その開発の意義や機能性について紹介します。

 

※1. LGBTQとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)、クエスチョニング、クィア(Q)の5つの頭文字を取った性的マイノリティ(性的少数者)の方々を表す総称
※2.女子スラックスとは、女子の体型の特徴に合わせて設計したスラックスのこと

1年で2倍以上にも!女子スラックス採用校の増加。

カンコーでは、1996年ごろから制服として女子スラックスを提供しています。当時は、北海道や長野県など、寒さが厳しい一部の地域に「防寒対策」や「自転車通学用」として採用されていました。

その後、女子スラックス採用校は、2020年以降に急激に増加しました。特に2022年は、2021年の倍以上となりました(図1)。

図1
女子スラックスを新たに採用した学校数※3
  • ・2022年は2021年の倍以上に増加していることが分かる。

資料:カンコー学生工学研究所2022年3月調べ
※3 カンコー実績の中学校・高等学校・支援学校や専門学校等

女子スラックスが採用されている理由。

女子スラックスの採用が増加し始めた背景には、2016年に文部科学省から発行された『性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒に対するきめ細やかな対応等の実施について』によって、多様な性のあり方や、生徒の個性を尊重する意識が高まったことが挙げられます。

一方、ここ数年の傾向として、「防寒性」や「動きやすさ」など、機能性が注目されています。

これには、女性のパンツスーツの普及が進んだ社会変化の背景も関係しているのではないかと考えています。

雨の日や風の強い日でも動きやすくて機能的なパンツスーツは、日常的にスーツを着用される方にとって、便利なアイテムの1つです。女子生徒が快適なスクールライフを送るために、このようなパンツスーツの利便性がスラックスを選ぶ動機の1つになっているのかもしれません。

実際に、女子生徒からスラックスを求める声によって学校が採用を検討する事例も増えています。

女子の体型に合わせたデザインの意義。

女子スラックスを開発するうえで注目すべきポイントは、女子と男子の体型の“ウエストとヒップの差”です。

一般的に男子はウエストとヒップの差が比較的小さいため、ウエストが合えば、スラックスをきれいに着こなせます。

一方、女子は、男子に比べて腰周りに丸みがあるので、ウエストのサイズに合わせて男子の体型に合わせたスラックスを着用するとヒップが窮屈になりがちです(図2)。

 

こうした身体的特徴の違いから、女子の体型に合わせたスラックスのデザインを開発する意義は大きいと考えています。

従来は、丸みをもたせたシルエットが主流でしたが、体のラインが強調されることに抵抗感をもつ学生たちへの配慮が十分とは言えませんでした。

そこで、現在では、シルエットを強調させないデザインに力をいれています。

図2
体型からみる男女の違い

性別に左右されないシルエットの新提案。

カンコー学生工学研究所では、女子体型の特徴に合わせつつ、着用したときのシルエットが男子用と変わらないデザインのスラックスを新たに開発しました(図3の右側)。

動きやすさや着心地を重視しながら、膝下がストレートで脚の形が強調されないデザインとなっています。

図3
スラックス着用時のシルエット比較
  • ・着用時には見た目がほとんど変わらないことが分かる。

女子スラックスは時代の変化とともに浸透。大多数の人が好意的。

世間では、女子のパンツスタイルについてどのように思っているのでしょうか。

カンコー学生工学研究所では、2022年6月、全国の10~60代の男女1,200人を対象に「女子制服のスラックス導入の状況」に関するインターネット調査を実施しました。

女子のパンツスタイルのイメージについて質問したところ、「違和感がある」7.9%、「かわいくない」6.8%、「女子中高生らしくない」5.1%、といったネガティブな意見があったものの、「自由でよい」64.8%。「動きやすそう」44.3%、「暖かそう」24.8%、「かっこいい」20.0%といったポジティブな回答が多くみられました。

特に女性は、「自由でよい」、「動きやすそう」、「暖かそう」、「かっこいい」の4つの項目で男性より高く評価をしており、同性のパンツスタイルに対して好意的であることが分かります(図4)。

図4
あなたは、女子制服のパンツスタイル(スラックス)について、どのように思いますか。(複数回答)
  • ・女子制服のパンツスタイルについて、好意的な意見が多いことが分かる。

資料:カンコー学生工学研究所 2022年6月 全国の10~60代の男女1,200人を対象にインターネット調査を実施

気軽に試着を利用して、着心地の体感を。

女子スラックスを着用している生徒は、まだまだ少ないのが実情です。

周囲から浮いてしまうことを気にする生徒がいる一方で、カンコー学生工学研究所には、「動きやすい」「暖かい」「強風の日や階段の昇降で気を使わないでいい」「自分らしくいられる」「スラックスを着用している自分が好き」など、ポジティブな声が寄せられています。

女子スラックスを採用している学校では、採寸時に試着できるところがほとんどです。試しに着用してみてシルエットや着心地が気に入り、購入を決めたというケースもあります。まずは試着して、スラックスの魅力を体感することからはじめてみてはいかがでしょうか。

 

カンコー学生工学研究所では、今後も子どもたちが安心して、個性を尊重した快適な制服を選べるよう考え続けていきます。

 

(カンコー学生工学研究所 澤埜)

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