学校における熱中症対策を考える。

学校における熱中症対策を考える。
湿度に着目した新たなアイテム。

2023.06.28

近年、暑さが増してくると「熱中症」という言葉を聞かない日がないほど、その発生について耳にするようになりました。生徒も、もちろんその例外ではありません。文部科学省と環境省は、2021年に「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」を作成し、熱中症対策に関する最新の情報や優良事例を学校関係者に周知しています。また、各学校で作成されている危機管理マニュアルにおいて、熱中症対策に関して記載し、常に見直し・改善することの重要性も示しています。

独立行政法人日本スポーツ振興センターによると、2022年度の熱中症における学校管理下での中学校・高等学校の生徒の医療費給付件数は、約2,300件でした。病院にかからず、保健室や自宅で療養した生徒がいると考えると、熱中症の発生数はさらに多いことが予想されます。

図1は、先述の医療費給付の場合別発生割合をみたグラフです。発生割合が最も高いのは、「課外指導」です。中でも「体育的部活動」が多く、全体でみても57.5%を占めていました。次に多いのは、「各教科等」「学校行事」です。「各教科等」の内訳は、「体育(13.7%)」が高く、「学校行事」の内訳は、「運動会・体育祭(8.7%)」「競技大会・球技大会(3.9%)」が高い結果でした。「体育的部活動」「体育」「運動会・体育祭」など、屋外に出ることが多い運動時の発生割合が非常に高いことがわかります。

図1
中学校・高等学校での熱中症による医療費給付の場合別発生割合(2022年度)

資料:独立行政法人日本スポーツ振興センター「学校管理下の災害(令和4年度版)」を基に作成
*グラフの数字は、小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

熱を遮る体操服「MIENNE」。

運動時に熱中症の発生が多いことから、カンコーでは特に体操服において、暑い夏でも快適に着用できる商品を研究・開発してきました。そのひとつが「MIENNE(ミエンヌ)」シリーズです。熱や光をブロックする粒子を中心部に集中させた特殊な糸の使用により、非常に高い遮熱性を備えています。図2は、「MIENNE」の生地を用いて行った遮熱実験の結果です。人口太陽光照明灯で「MIENNE」生地を照らし、生地の下に置いた熱線受光体の温度を測定します。熱を当て続けた15分後には、生地を置かない状態の時と比べて約20℃の差が発生することがわかりました。また、吸水性や速乾性にも優れているため、熱の放散を促進し、衣服内を快適な状態に保ちます。
「MIENNE」を使用した商品は発表以来、多くの学校で採用いただき、現在では体操服にとどまらず制服のポロシャツとしても展開しています。

図2
「MIENNE」の遮熱実験

資料:カンコー学生工学研究所 2018年10月 「MIENNE遮熱実験」カケンテストセンターにて実施

湿度に着目したプラスワンアイテム。

現在、カンコーが熱中症対策として着目しているのが湿度です。人間の身体は、体温が上昇すると汗をかいたり、体表面から熱を放散したりして適切な体温に調整しようとしますが、湿度が高いと汗の蒸発が制限されてしまい、熱中症になりやすいと言われています。そこで、制服・体操服に合わせる新たなプラスワンアイテムとして、湿度を下げることに特化した「ファン付きウェア」の研究に取り組み始めました。
ファン付きウェアは、ファンから取り込んだ外気を衣服内全体にいきわたらせることで、衣服内に空気の流れを生み出し、汗の気化を促進します。そして、汗の気化熱で体温の上昇を防ぐことができます(図3)。屋外で作業にあたる人たちの夏の定番品となりつつありますが、ここ数年の間でアウトドアやタウンユースとしても広がりを見せています。カンコーでは、生徒が学校生活の様々な場面で着用することを踏まえ、どのようなデザインが取り入れられやすいのか調査研究をしています。

図3
ファン付きウェアの仕組み

今夏には、全国の学校で生徒に着用してもらうテストを実施予定です。実際に生徒が学校で着用することで、どのような声が聞けるのか私たちもとても楽しみです。
ぜひ、この新しい取り組みの今後の展開にご注目ください。また、興味をお持ちいただいた学校さまはお問い合わせください。

 

 

(カンコー学生工学研究所 松田)
この記事に関するお問合せはこちら

SHARE
  • LINE
  • twitter
  • facebook