カンコー学生工学研究所の「かわいい制服研究室」では、大阪大学大学院の入戸野教授にご協力いただいて、私服にはない制服の“かわいさ”
“制服の満足度”と“制服のかわいさ”の関係性。
私たちは、まず女子中高生を対象にアンケート調査を行い、複数の制服写真の中から着たい制服を選択した上で、その理由を選んでもらいました。その結果、最も多かった理由は、約6割の学生が選択した「かわいい」でした(図1)。次に「現在の制服」の満足度を調査すると、「満足度が高い」と感じている学生は、現在の制服を「かわいい」と評価しており、“制服の満足度”と“制服のかわいさ”に強い関係性があることがわかりました(図2)。
女子中高生が思う、制服の“本質”と 制服への“期待”
次に、女子中高生に「理想の制服」「現在の制服」「お気に入りの私服」を着ている自分を具体的に想像してもらい、その時の自身の印象(11項目)について回答してもらいました。その11項目を統計的手法で分析した結果、『社会的側面』と『個人的側面』の2つのグループに分けることができました(図3)。「理想の制服」と「現在の制服」は共通して『社会的側面』の「きちんと感・学生らしさ・安定感」のポイントが高く、これを私服にはない制服の“本質”= “制服らしさ”と捉えました。また、「理想の制服」と「お気に入りの私服」において、共に『個人的側面』のポイントが高くなりました。中でも「かわいさ・青春っぽさ」が「理想の制服」でより高く、女子中高生は特にこのような特徴を制服に“期待”していると言えます(図4)。
“理想の制服”と自己評価感情。
また、「理想の制服」「現在の制服」「お気に入りの私服」を着ている自分に対する自己評価感情についても調査しました。その結果、学生は着用するものによって、自分への評価が変わることがわかりました。「理想の制服」は「現在の制服」「お気に入りの私服」よりも、個人基準(今の自分が好き等)・社会基準(人には負けないものがある等)の双方において、肯定的な自己評価感情が高まりました(図5)。つまり、「もしも理想の制服を着ることができたなら、自分はもっとよくなれる」と学生自身が考えていると言えます。この結果をかわいい制服研究室では、“「ワタシをもっと好きになる」そんな制服が着たい。”というキャッチコピーで表現しました。
※図1~図5
資料:カンコー学生工学研究所2021年「制服を着ることによる心理的効果の調査」
全国の女子中高生2・3年生の400名(各学年100名)を対象にインターネット調査を実施
なお、結果グラフは、3種の服装すべてで着用した自分を具体的に想像できた279名のデータを使用
制服に対する母親の想い。
また、女子中高生の母親を対象に行ったアンケート調査では、母親は制服を着た子どもの印象について、「かわいさ」よりも「きちんと感・学生らしさ・安定感」という“制服らしさ”をより強く感じていました。その一方で、“かわいい制服”を求める子どもの好みもよく理解しており、「子どもに着せたい制服」を選んだ理由として、最も多く挙げられたのは「かわいい」でした。この結果からは、母親自身が制服に求めるものは“制服らしさ”であるものの、子どもの求める“かわいい”を尊重するという母親の想いが感じとれました。
資料:カンコー学生工学研究所2022年「制服に対する母親の意識調査」
全国の女子中高生の母親400名(中学生・高校生各200名)を対象にインターネット調査を実施
これまでの女子中高生と母親の調査結果を考察すると、制服の価値や役割について新たな発見がありました。(図6)
入戸野 宏(にっとの・ひろし)教授
大阪大学大学院 人間科学研究科教授。1971年横浜市生まれ。専門は、実験心理学、心理生理学。認知・感情・動機づけといった人間の心と行動の仕組みについて幅広く研究している。著書に、『「かわいい」のちから:実験で探るその心理』(化学同人 2019年)、『シリーズ人間科学3:感じる』(大阪大学出版会 2019年)など。
「かわいい制服研究室」が考える制服の価値。
私たちは、これまで制服を「かわいい」という側面から研究してきました。その結果、今の時代におけるかわいい制服は、社会における役割と自分らしさのバランスが重要であることがわかってきました。気に入った制服を着ることができれば、肯定的な自己評価感情が高まるといった私服にはない価値が生まれます。さらに、周りの人と思いを共有してつながることができるといった制服ならではの価値も見えてきました。私たちは、今後も私服にはない制服の価値や学生たちが求めるかわいい制服を追求し、みんなの笑顔につながるようなモノ・コトを提案していきたいと思います。