動きやすさと快適性を追求した

動きやすさと快適性を追求した
独自の4Dカッティング技術。

2020.10.29

動きやすさを追求してきたカンコーの歴史。

カンコーでは、1992年からHQL(一般社団法人 人間生活工学研究センター)が実施した膨大な統計データを用いて中高生の体型調査を実施。筋肉や関節の構造をはじめ、子どもたちの身体の特徴を知るために、長年に渡って様々な研究を行ってきました。また、子どもたちの「動き」にも着目し、分析することで、より快適なスクールユニフォームをお届けするための製品開発に取り組んできました。
一方、体操服の開発においては、子どもたちが体育の授業や運動を通して、より充実した学校生活を送るため、さらに「動きやすさ」や「着心地」を追求していく必要があると考えました。そこで、運動機能性と着用機能性を考慮して開発したパターン設計が4Dカッティング(以下:4D)です。今回は、4D開発の経緯やその特徴を紹介します。

時代の変化とともに、体操服に使用する生地や色使い、パターン設計が変化してきた。

学生の運動能力と意欲を向上させる新たな体操服研究。

「動きやすさ」や「着心地」を追求していく過程で、2009年に開発されたのが、立体設計を用いた3Dパターンです。ジャケットは、人体の厚みを考慮して前身頃より後身頃を広く設計。前屈の姿勢に対応するよう前身頃側の裾を短くすることで、衣服のもたつきを解消し、学校生活での着やすさを考慮した立体的なパターン設計を実現しました。
しかし近年、子どもたちが身体を動かす機会が減っていることに加え、2015年にカンコー学生工学研究所が行った学生の意識調査では、20%超の学生が「体育の授業が嫌い」と回答するなど、運動嫌いの子どもたちが一定数いることがわかっています(図1)。このような運動離れという時代の変化も踏まえながら、着用した際に少しでも学生たちのストレスを軽減し、動きやすさを向上させ、さらには身体を動かすことが楽しくなるような体操服を設計しようと新たな研究・開発がはじまりました。

図1
あなたは体育の授業が好きですか?(単数回答)
  • ・中高生に体育の授業について好きか嫌いかを聞いたところ、6.7%が「とても嫌い」、14.7%が「やや嫌い」と回答。合計20%超の学生が体育の授業を嫌いと回答している。

資料:カンコー学生工学研究所 2015年 中高生の男女5,000人に調査実施

パターン設計による動きやすさとデザインの両立。

新たな体操服を開発するにあたって最大の課題はパターン設計です。4Dでは、最初にトルソー※1に生地を合わせて、関節なども考慮しながら、人体に沿ってパターンをひく立体裁断という手法を取り入れています。トルソーを用いて試作品をつくった後に、実際に人が着用し、身体の可動範囲や生地の突っ張り、だぶつきを体感して修正を加えていきます。試作品づくりを繰り返して、人の動きにスムーズに追従しつつ、デザイン性も兼ね備えたパターン設計を目指しました。
そして、完成した4Dには様々な工夫が凝らされています。例えば、ジャケットでいうと襟元 のスタンドカラーです。首に当たらないよう高さを抑え、接触してもストレスがかからない柔らかいストレッチ性のある生地(フライス)を使用しています。背中の肩甲骨の部分には伸縮する横ストレッチ素材を入れ、前身頃と後身頃の間の裾部分にもフライスを使用しています(図2)

※1 カンコー独自の基本身体マネキンをベースに制作した人体ボディ

図2
4Dの特長
  • ・従来製品の場合は、ジャケット約11パーツ、パンツが約4パーツであったのに対し、4Dの基本タイプの場合、ジャケットが約23パーツ、パンツが約8パーツと、従来製品と比べてより多くのパーツが使われている。そして、パーツが多いだけでなく、小さなパーツやカーブが多いことによって、人間の自然な動きへの追従を可能にしている。
図3
4Dと従来製品の動作検証

定点カメラを用い、腕や脚にポイントをつけて様々な動作を行い、従来製品と4Dの裾の移動距離(引っ張られる距離)を比較。身体に余計な力が加わらなければ生地は動かず、その移動距離が少ない方が動きやすい体操服であると仮定して、検証を行った。

  • ・4Dが従来製品の数値を下回ったことから、身体にフィットして動きやすい体操服であるということが明らかになった。

資料:広島県立総合技術研究所 2012年

学生やアスリートに寄り添い、体操服を進化させていく。

カンコーが2016年からスポンサードをしているプロバスケットボール チーム「トライフープ岡山」では、4Dのパターン設計を取り入れたウェアを採用いただき、練習着として着用していただいております。
また、2017年に信州大学にご協力いただき着衣実験を行ったところ、4Dのジャケットは、確かな運動性と快適性が実証されました(図4)。高い機能性が認められたことで、4Dの体操服を採用していただける学校も徐々に増えてきました。学生の運動不足や運動離れが懸念される近年ですが、「動きやすさ」にこだわって開発した4Dが実現する「ストレスフリーな着心地」で学生たちの動きをサポートし、実力を発揮してもらいたいと考えています。何より、運動することを楽しいと感じてもらうことで、学生たちにとって、より豊かな学校生活の実現につながることを期待しています。
そして、製品や技術を開発して終わりではなく、実際に着用していただいた学生やアスリートの方々の意見をお伺いし、さらに技術の改良に反映させていくことが大切だと思っています。時代の流れの中で、今後、体育のあり方は大きく変わっていくかもしれません。そうした変化を捉え、学生や先生、アスリートなど、現場の声にも耳を傾けながらカンコーの体操服をさらに進化させていきます。

図4
4Dの製品と従来製品の運動性、快適性の比較実験

4Dの製品を着用した場合、従来製品を着用した場合、裸の場合、それぞれで 180度前挙を10回連続で行い、動作性評価を実施。筋電図(EMG)計測と心理計測の2種類の方法で比較した。

  • ・服の動作性、着衣快適性に関する検証を行ったところ、4Dは従来製品と比べて、運動性や快適性が高い結果となった。

資料:国立大学法人信州大学 繊維学部先進繊維・感性工学科 2017年 「4Dカッティング体操服上衣の動作性評価」

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