カンコー学生工学研究所では、カラダ・ココロ・時代・学びの4つの視点で、日々子どもたちの変化を調査・分析し、これからの制服の在り方について研究しています。
前回ご紹介した生徒1,000人に対するアンケート調査では、今とこれからで学校制服の変わらない価値と変わりつつある価値があることが明らかになりました。この傾向は保護者においても同じなのでしょうか。今回は保護者に対して実施したアンケート調査結果を紹介します。
調査の概要
全国の中学校・高校に通う生徒を子どもに持つ保護者1,000人を抽出し、アンケートによる定量調査を実施しました。ここでは、アンケート調査の実施方法と設問内容を紹介します。
実施方法
今回実施した調査の概要は次の通りです。
【調査対象】
中学校・高校の生徒を子どもに持つ保護者1,000人
【調査対象者の内訳-1(子どもの性別)】
中学女子の保護者・中学男子の保護者・高校女子の保護者・高校男子の保護者:各250名
【調査対象者の内訳-2(中学・高校)】
中学生の親:500人 高校生の親:500人
【調査対象者の内訳-3(公立・私立)】
公立:500人 私立:500人
【対象エリア】
全国47都道府県
【実施期間】
2023年6月2日~6月21日
設問内容
アンケートでは「今、着用している制服について感じていること」と「今後、制服に期待していること」に関する質問をしました。質問は、制服が持つと考えられる価値を26項目設定し、それぞれに対する共感度を「あてはまる」「ややあてはまる」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の4つの回答から選んでもらう形式です。
調査結果-今の制服について感じていること-
今、お子さんが着用している制服について感じていることの回答結果は下図の通りです。(図1)
“あてはまる”と“ややあてはまる”と回答した人の合計が大きかった項目は、上位から、毎日の服装選びに困らない(88.7%)、学生の象徴である(82.9%)、式典や冠婚葬祭で着用できる(82.6%)、統一感があるように見える(82.5%)、丈夫で長持ちする(81.0%)でした。
ほぼすべての項目で、“あてはまる”と“ややあてはまる”の合計が“あてはまらない”と”ややあてはまらない”の合計を上回っていました。しかし、「色やデザインによって地域性を表現できる」「地球環境に配慮している」「自分らしさが表現できる」は下回る結果となりました。
生徒向けアンケートと保護者向けアンケートの“あてはまる”と“ややあてはまる”の合計値と比べたとき、生徒の回答率が親より著しく高かった項目は、おさがりがしやすい(15.3%の差)、地球環境に配慮している(9.9%の差)でした。逆に保護者の回答率が生徒よりも著しく高かった項目は、限られた期間にしか着られない特別感がある(13.3%の差)、気持ちの切り替えができる(9.3%の差)、誰にでも似合う(9.2%の差)でした。
調査結果-今後の制服に期待していること-
今後、制服に期待していることについて感じていることの回答結果は下記の通りです。(図2)
あてはまる”と“ややあてはまる”と回答した人の合計が大きかった項目は、上位から、毎日の服装選びに困らない(88.1%)、式典や冠婚葬祭で着用できる(85.7%)、丈夫で長持ちする(84.9%)、3年間着用できるため、私服よりも経済的である(84.2%)、流行に左右されないデザインである(83.9%)でした。
生徒向けアンケートと保護者向けアンケートの“あてはまる”と“ややあてはまる”の合計値と比べたとき、生徒の回答率が親より著しく高かった項目は、おさがりがしやすい(9.8%の差)、自分らしさが表現できる(9.3%の差)、色やデザインによって地域性を表現できる(9.3%の差)でした。逆に保護者の回答率が生徒よりも著しく高かった項目は、式典や冠婚葬祭で着用できる(8.8%の差)、流行に左右されないデザインである(8.1%の差)でした。
続いて、“あてはまる”と回答したもののうち、特にこれからの制服に希望するものを、3つ選んでもらいました。
その回答結果は下図の通りです。(図3)
公立と私立の保護者の間で最も大きな差が出た項目は、「毎日の服装選びに困らない」でした。(図4)公立も私立も1位でしたが、7.1%の差が出る結果となりました。次に大きな差が出たのは「おしゃれなデザインである」で、公立が10位だったのに対して、私立は5位で、5.2%の差が出ました。男女別では、保護者の回答に大きな差が出る項目はありませんでした。
全体の上位10位に入っている項目と、公立、私立の上位10位に入っている項目は同じでした。ただし私立の「学校の文化や伝統を象徴する」は同率10位で、全体の順位では15位、公立の順位では21位でした。
これからの制服に対する期待度
「今の制服に感じること」「これからの制服に期待すること」の2つの調査で、“あてはまる”と“ややあてはまる”の合計の割合を比較しました。「これからの制服に期待すること」が「今の制服に感じること」より数値が高い場合、期待度が大きいとします。
今の制服の価値よりも高い結果が出た項目は、上位から、地球環境に配慮している(+18.0%)、自分らしさが表現できる(+16.2%)、おしゃれなデザインである(+13.4%)、自分に自信が持てる(+12.6%)、おさがりがしやすい(+9.5%)でした。
今の制服の価値より低い結果が出た項目は、上位から統一感があるように見える(-1.1%)、毎日の服装選びに困らない(-0.6%)、学生の象徴である(-0.1%)の3項目でした。
まとめ
「毎日の服装選びに困らない」、「式典や冠婚葬祭で着用できる」、「丈夫で長持ちする」、といった項目は、今とこれからで共通して高い結果となりました。これからの制服に対する期待度では、「地球環境に配慮している」「自分らしさが表現できる」「おしゃれなデザインである」「自分に自信が持てる」が新たな価値として期待が大きいことが明らかになりました。
保護者と生徒では、「毎日の服装選びに困らない」は今とこれからで共に共通して高い結果となっており、制服における普遍的な価値と認識されていることが明らかになりました。これからの制服に対する期待度では、上記の「地球環境に配慮している」「自分らしさが表現できる」「おしゃれなデザインである」「自分に自信が持てる」は、生徒でも共通しており、今後、強く求められていくと考えられます。
一方で、保護者にとって価値が高い「おさがりがしやすい」、「限られた期間にしか着られない特別感がある」、「色やデザインによって地域性を表現できる」が生徒では低い結果となるなど、保護者と生徒では価値が異なるものがあることがわかりました。
カンコー学生工学研究所では今回の調査を活かして、制服の普遍的価値と今後求められていく価値を追求した、より良い商品開発を行っていきます。
次回は学校の先生を対象としたヒアリング調査の結果を紹介します。学校制服に対する価値変容に対して学校側がどのように対応をしているのか、事例を交えながら考えていきます。
(カンコー学生工学研究所 田中)
この記事に関するお問合せはこちら。