地域、寒さに対応した、
制服の組み合わせを数値化。

2019.10.21

異なる地域・気候において、 学生たちの制服の組み合わせがほぼ同じという事実。

日本は四季の変化と南北に長い形状から豊かな風土をもち、地域によって気候が異なります。カンコー学生工学研究所では、季節ごとに日本各地の気候を把握するための調査を行ってきました。学生にとって毎日のように着用する制服だからこそ、地域ごとの気候の違いを知ることが制服をつくる上でも大切だと考えてきたからです。
各地の気象条件(学生が制服を着用している時間帯の最高・最低気温、平均気温、平均湿度など)を収集した2014~2018年の5ヵ年のデータでは、北海道と福岡の12月平均気温を比較すると、その差が約10℃あるという結果が出ました(図1)。このように緯度の差から大きく気温は異なりますが、制服の基本的なコーディネートは地域による違いがほとんどありません。そのような事情から、冬の季節は制服にベストやマフラーなどのアイテムを組み合わせるなど、その地域と気候に合わせた工夫をする必要があります。
そこでカンコー学生工学研究所では、地域・気候条件が異なっても、快適に過ごすことができるアイテムの組み合わせを明確にしたシステムを構築することで、これまで以上に最適な制服の組み合わせと快適な学生生活の提案が可能になるのではないかと考えました。

図1

* 気象庁データより、カンコー学生工学研究所が算出

寒暖研究を通して学生にとって快適な生活環境を知る。

カンコー学生工学研究所では、客観・主観にとらわれず、人の寒さ暑さに関わる研究を寒暖研究と呼んでいます。例えば、気候調査のような統計的な調査や、一定の環境下における学生の心拍数や血圧、皮膚温などの生理的反応の調査、そして、どのように感じるかを主観的に判断する官能評価などの研究を行ってきました。
その中で、一般的な冬制服を着用した学生が快適に過ごせる室温を人工気候室を使用して検証する実験を行ったところ、快適な室温は23~26℃ということがわかりました。
その後、教室内だけでなく、外気にさらされる通学時や、地域・気候が異なる生活環境の中で、学生たちがどのような制服の組み合わせをすれば、快適に過ごすことができるかを考えるようになりました。快適な生活環境を探るためには、気温や服装だけでなく、様々な外部要因を考慮する必要がありました。

気候に合わせて快適な制服の組み合わせがわかるシステム 「SAWSUS(ソーサス)」の完成。

学生にとって快適な生活環境を知る上で考慮すべき要因として、外気温や湿度や風速の他に、その時の服装や、歩いているか走っているかといった運動量の違いも影響してくるため、それらの組み合わせで変化する体感温度が重要でした(図2)。体感温度として一般的に快適だと言われているのは、24±2℃です。 
様々な環境条件下でこの体感温度24±2℃に近づけるため、冬にはジャケットやマフラーなどを着用して防寒対策を行いますが、何のアイテムがどのくらい温かいか、クロー値と呼ばれる「衣服の保温量」を導き出す必要がありました。そのクロー値を割り出すために、各アイテムを着用した際の衣服内の保温量が測定できるサーマルマネキンを使用し、温度、湿度を一定に保つことができる恒温恒湿室にて、ジャケットやスカートなど総計47アイテムの保温量を測定しました(図3)。さらに一般的にもわかりやすい数字にするため、カンコー独自の特殊な計算式によってクロー値を変換し、カンコー保温快適指数(KCI=Kanko Comfort Index)として算出。各アイテムの保温量を示す数値として、KCIを明確にするとともに(図4)、各地域・季節ごとにKCIの合計目標値を設定しました(図5)
こうして完成したのがカンコー独自の秋冬季最適制服着装選定システム 「SAWSUS=Selected Autumn Winter School Uniform System」です。地域と時期、気象条件に合わせて、どのようなアイテムをプラスすれば快適な体感温度が得られるかを明確にしたことで、最適なコーディネートの提案が可能となりました。

※ 参考:2006年・空気調和・衛生工学会発行「新版・快適な温熱環境のメカニズム豊かな生活空間をめざして」

図2
快適温度を決定する要因
図3
サーマルマネキンを用いた検証実験風景

人体の発熱を再現、セーターやジャケットなどを着用させ衣服の保温量を測定。

図4
カンコー保温快適指数(KCI)

各アイテム(ブレザー、ニットベスト、スカートなど)をKCIとして数値化。

図5
カンコー保温快適指数(KCI)と制服の組み合わせ

例)東京における11月と2月の屋内外で快適に過ごせるカンコー保温快適指数(KCI)

* 素材等によって、KCI値が多少異なる場合もあります。

学生工学的視点で、環境変化を注視し続ける。

快適な制服の組み合わせをサポートするSAWSUSが確立されたことにより、学校制服を採用する際に数値を根拠としてアイテムを検討することが可能となりました。
地域の気候と現在の制服が学生たちにとって快適か、カンコー保温快適指数(KCI)と照らし合わせたり、制服検討の際には、学生たちや学校関係者の方々がニットやコートなど、新たなアイテムを追加する判断基準のひとつとして活用していただいています。
そして現在、ノートルダム清心学園 清心中学校・清心女子高等学校と共同で2020年度の完成を目標にプロジェクトが進行しています。観察力や課題発見力、創造力、コミュニケーション力などを育む教育活動の一環として、SAWSUSを活用し、学生たち自らが学んでスクールアイテムであるコートをつくるという試みです。
また気象データに関しても、近年著しい環境変化が起きていることから大きな変動が予測されるため、引き続き定点調査を行っていきます。今後も、こうした寒暖研究をはじめ、学生たちがより一層快適に過ごせるよう学生生活に関わるあらゆる調査・分析に取り組んでいきます。

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