制服は時代とともに変化している。
皆さんは学生時代、どんな制服を着ていましたか?
実は、昔の学生が着ていた制服と今の学生が着ている制服は変わっていないように見えて、時代とともに様々な変化を遂げています。
制服のデザインは一般的なファッションの流行と強い関係性があります。
例えば、1980年代の「DCブランド(コシノジュンコ等のデザイナーズブランド)ブーム」と高校制服のブレザースタイル化には、顕著にこの関係性が現れています。この流行が制服に取り入れられたのは約10年後でしたが、他の時代の制服についてはどうでしょうか?
一般的なファッションの流行を軸に、ブレザースタイル制服のシルエットの変遷について、時代を追ってみていきましょう。
制服と一般的なファッションの関係。
■1980年代前半
制服にブレザーが多数取り入れられ始めた時代、DCブランド※1やビッグショルダー※2のスペンサージャケットが一般的なファッションで流行しました。スペンサージャケットは燕尾服(エンビフク)の尻尾(シッポ)部分を切り取ったようなスタイルです。
この流行を受け、約10年後の1990年頃からDCブランド制服やビッグショルダーのスペンサージャケットの制服が取り入れられ始めています。
※1 DCブランド:デザイナーズ&キャラクターズブランドを意味し、デザイナーズブランドを総称したもの
※2 ビッグショルダー:大きな肩パッドが入っており、肩幅が大きく見えるシルエットの服
■1980年代後半
ソフトスーツと呼ばれる、体に対して大きめのスーツを着用するスタイルが流行しました。
この流行はツータックパンツ※3という形で約7年後の1995年頃から制服に取り入れられ始めています。
※3 ツータックパンツ:左右に2本ずつタックが入っているパンツ
■1990年代前半
その後はカジュアルな時代に突入し、カジュアルでありながら清潔感が漂うファッションが流行します。
通称「紺ブレ」と呼ばれる、アメリカントラッド※4の代表的なスタイルが流行し、ビッグショルダーのような大きな肩のシルエットの姿が少なくなってきました。
この流行から約7年後、制服にアメリカントラッドスタイル(紺ブレ)が取り入れられ始め、現在のブレザースタイルの制服に近いやや体のラインにあったシルエットになっていきました。
※4 アメリカントラッド(アメトラ):アメリカの伝統的なファッションを指し、流行に左右されることのない保守的なスタイル
■1990年代後半~2000年代前半
時代は進み、さらに、体のラインにあったシルエットが取り入れられるようになります。
一般的なファッションではリアルクローズ※5やミニマリズム※6のテイストが取り入れられ、これまでの華美な装飾をなくしたファッションが流行します。
シルエットもロング&シェイプなシルエットへと変化し、身体のラインが出るスタイルが主流になり始めました。
制服も、アメリカントラッドの紺ブレザー時代と比較し、より細身なシルエットへと姿を変えています。
この流行から約4年後、制服に取り入れられ始め、Vゾーン※7の広さもこれまでの制服史上もっとも狭くなります。代表的なものが3つボタンのブレザースタイル制服で、よりシンプルでスタイリッシュなシルエットの制服が増加しました。
※5 リアルクローズ:現実的な服の意で、上質できちんと縫製された本物志向の服を指す
※6 ミニマリズム:最小限の要素だけを用いる手法・様式の意
※7 Vゾーン:ジャケットの襟開き部分を指す
■近年の流行とファッション
一般的なファッションではユニセックスなスタイルも増え始め、性差を感じさせないファッションを見かけるようになりました。
制服でも、性差の少ないジェンダーレスなデザインが増えてきています。
また、パーカーなどのスポーツアイテムも採用する学校もあり、寒暖対応や活動に応じたアイテムを揃え、学生たち自身に着用スタイルの選択肢を与えるなど時代とともに制服の在り方も変化し続けています。
変化が加速する制服シルエット。
このように制服も一般的なファッションと同様に、時代の流行に合わせて変化をしてきました。
さらに近年は多様性が求められる時代の中で、変化のスピードも加速しています。
ファッションは繰り返すとよく言われますが、制服も同じように以前の流行が注目されることがあるかもしれません。
カンコー学生工学研究所では、トレンドの調査分析によって時代を把握し、制服の新しい価値を創造していきます。