時代とともに変化する
学生たちの色彩嗜好を探究する。

2020.12.21

過去と今を照らし合わせ、嗜好の変化を知る。

学生たちを「カラダ」「ココロ」「時代」「学び」の4つの視点で見つめるカンコー学生工学研究所。その中でも、学生たちの「ココロ」と「時代」に焦点をあて、1996年から定期的に色彩嗜好調査を行っています。当初、女子高校生、男子高校生を対象にはじまった調査も、今日では高校生に限定することなく、成人にも対象を拡大し、アンケートを実施。その調査方法も、回答用紙に記入していただく形式からインターネットを用いたオンライン形式に変更するなど、時代に合わせてその対象と形式を変えながら調査を続けています。また調査内容も、好きな色や嫌いな色をはじめ、制服として着たい色、キーワードから連想する色など、様々な観点から色の嗜好性を調査(図1)。長年に渡ってデータを蓄積することで、時代によって学生たちの色に対する嗜好がどのように変化しているかを比較・検証することが可能になりました。

図1
色彩嗜好調査の質問の一例
  • ・カンコー学生工学研究所がセレクトした60色をベースに調査を実施。
    2020年の調査では、「好きな色を教えてください」や「嫌いな色を教えてください」などの質問に、「かわいいと思う色」、「かっこいいと思う色」を加えており、時代に合わせて少しずつカスタマイズしている。その他にも、「学校」「家庭」「友人」「自分」など、それぞれの言葉から連想する色や、「制服のワンポイントとして取り入れたい好きな色」などを質問した。

時代によって変化する色、変化しない色。

1990年代初頭、学校制服のブレザー化が進み、1990年代中盤から後半になると、スクールアイデンティティという考えのもと、学校らしさを制服にも反映していこうという動きが広まりました。その中で、オリジナルの制服づくりに力を入れる学校が現れはじめ、次第にスカートの柄やリボンなどのカラーバリエーションが豊富になっていきました。そこで、カンコー学生工学研究所でも、制服づくりに役立てていただくため、年齢別に細かな身体の特徴を知る「体型調査」に加え、学生たちの色や柄に対する嗜好を知るための「色彩嗜好調査」を開始しました。
色彩嗜好調査の回数を重ねていくうちに、時代によって学生たちの嗜好が変化していることがわかってきました(図2)。1996年の調査では、女子高校生の好きな色はブルー系が上位だったのに対し、2000年代はピンクなどのパステルカラーが上位の時期が続き、最新の2020年の調査では、ミントやラベンダーなどが人気の色となっています。「好きな色」が変化する一方で、「学校」「家庭」などのキーワードから連想する色は変化が少なく、どの時代を通しても共通のイメージとなっているという気づきがありました(図3)。

図2
色彩嗜好調査(女子高校生の好きな色の時代変化)
  • ・女子高校生の好きな色は時代によって変化しており、1996年にはストロングトーンのブルー系、2008年・2016年はペールトーンのピンク系、2020年はペールトーンのブルー系へと移り変わっている。

資料:カンコー学生工学研究所 女子高校生の嗜好色比較
全国の女子高校生を対象に、1996年3,941人にアンケート用紙にて実施。2008年310人、2016年492人、2020年500人にネットアンケートにて実施。
*1996年のみ図1以外の色も含めて調査しています

図3
色彩嗜好調査(女子高校生の連想する色の時代変化)
  • ・女子高校生に学校、家庭、友人を連想する色を聞いたところ、調査年により1位の色が入れ変わっているものの、学校は理知的なイメージの黒や紺、家庭は陽気なイメージのオレンジ、友人は親しみやすいイメージのイエローやピンクになっている。

資料:カンコー学生工学研究所 女子高校生の嗜好色比較
全国の女子高校生を対象に、1996年3,941人にアンケート用紙にて実施。2020年500人にネットアンケートにて実施。
*1996年のみ図1以外の色も含めて調査しています

色彩嗜好を制服づくりへ活用。

学校オリジナルの制服をつくるにあたって、ジャケットやボトムスなどの大部分は、紺やグレーのベーシックカラーが採用されることが多いのですが、スカートのチェック柄やリボン、ネクタイといった小物の色を選定する際に、色彩嗜好の調査データを参考にしていただいています。制服は、授業中だけでなく、通学中も含め、学生たちが普段の生活の中で長い時間着用します。そのため、実際に制服を着用する学生たちだけではなく、彼らの成長を見守る家族や先生方、地域の方々にも喜んでいただける制服であることが理想です。
制服で使用する色を考える上で、学生たちの色彩嗜好はもちろん、スクールカラー(学校の歴史や特徴を象徴的に表す色)とエリアカラー(学校が所在する地域特有の気温、日照時間、土の色、自然光の色などによって影響される風土嗜好色(図4))という3つの側面から検討することが重要だと考えています。
そして、学生の嗜好や学校の伝統、地域の特色、それぞれに由来する色を考慮し、反映した制服づくりを通して、学生たちに制服への愛着と学校や地域への誇りを持ってもらい、より豊かな学生生活の実現に繋げていきたいと考えています。

図4
エリアカラー(風土嗜好色)
  • ・エリアカラー(風土嗜好色)とは、東西南北に細くたなびく日本列島は地域特有の気温・日照時間・土の色・ 自然光などが影響して《色彩の好みに地域差》が生まれるというもの。
    この傾向はスカート柄の採用傾向にも多少の影響を与えており、 2013年の色彩嗜好調査では《東日本:寒色、西日本:暖色》の傾向が見られた。

参考書籍:佐藤 邦夫「日本列島・好まれる色 嫌われる色」を基にカンコー学生工学研究所独自のエリア区分を設定

学生たちの未来を育むため、色彩嗜好調査の可能性を探っていく。

現在、リボンやニットをはじめスカートの柄、ソックスの刺繍部分など、配色を決定する際にも、調査を通じてわかった学生たちの色彩嗜好の結果が参考にされています。
また、色というのは、子どもたちの心理面においても様々な影響を及ぼすため、教室の環境を落ち着く配色にして学生たちが勉強に集中できるようにするなど、学校生活においても色彩嗜好調査を活用していける可能性を感じています。そして今後は、制服というものづくりの枠を超え、学生を取り巻く環境を整えることも含めて、学生たちをサポートしていきます。

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