中学生が不登校経験から考える

中学生が不登校経験から考える
「自分のペースを取り戻す」居場所

2026.10.30

学生工学研究所は「誰一人取り残さない制服・体操服づくり」を目指しています。まだ可視化されていない子どもたちの悩みを調べていくうちに感覚過敏という言葉に出会い、これまで感覚過敏の子どもたちが快適な学校生活を送れるよう研究開発を進めてきました。

 

そうした感覚過敏に関する取り組みのうちの1つ、カームダウンボックス※1について紹介します。

※1 カームダウンボックス(スペース)とは、光や音などの刺激で疲れたり、体調不良やパニックになってしまう方々が、心身を落ち着かせるための避難所・休憩所のこと

 

カームダウンボックスは現在、空港や大型の商業施設などに取り入れられており、様々な場所で設置されています。大阪・関西万博でも20か所以上設置されていました。色々な人が来場する公共施設では話し声や明るい照明など様々な感覚刺激があり、その刺激によって体調不良を起こしたり、外出時に不安を抱える人もいるようです。

 

私たちは公共施設だけではなく、学校生活においても様々な刺激があると考えています。その刺激によっては学校に行くことに不安を感じる生徒さんがいるのではないでしょうか。

 

⸺「誰もが学校生活を快適に過ごしてほしい」

そんな想いから、これまで学生工学研究所は学校で使用するカームダウンボックスについて、児童・生徒さんや先生方が安心してご利用いただけるようにボックスの形や使用方法などについて、研究開発をしてきました。

 

実際に東京の小学校様へカームダウンボックスを設置いただき、使用してもらっています。

先生方から伺ったお話や、小学校でボックスに取り入れた工夫については前回の記事で紹介しております。

よろしければ本サイト下の関連リンクよりご覧ください。

 

 

今回は、

⸺「私が不登校になる前にこのボックスがあったら、もしかしたら不登校になっていないかもしれない」

 

そんな想いを出会った時に伝えてくれた神田女学園中学校に通う中学3年生の鬼頭 芽愛(きとう めあ)さんの体験談からくる、カームダウンボックスの可能性を紹介します(当時中学3年生、現在は高校1年生)。

 

鬼頭さんとの出会いは、前述のカームダウンボックスを設置いただいた小学校がきっかけでした。

もともと神田女学園中学校の探求学習で、自身が不登校だった経験があることから「不登校」をテーマにされていたようで、自身の不登校の要因となった困り事を、このカームダウンボックスなら解決できるのではないかと考え、小学校の先生にお話を聞きに来られたそうです。そこで私たちも、鬼頭さんとお話しする機会をいただきました。

 

お会いして早速探究学習の内容をお聞きすると、不登校の要因はいじめではなく、クラスの雰囲気に馴染めず段々と学校へ行かなくなったこと、マイスクールを活用しながら最終的には小学校へ毎日通うようになり、中学生になってからはとても楽しんで学校に通うことができていることを話してくれました。今では当時なぜ学校に行けなかったのか、どうしたら行けたのかを振り返っておられます。

 

その振り返りの1つとして、休み時間の声や授業中の話し声がとても嫌だったこと、トイレを休む場所にしていたことを話してくれました。そして、逃げ込んだり、時には自分のペースを取り戻すための場所としてカームダウンボックスが使えるのではと思いついたそうです。

 

初めてお会いしたとき、鬼頭さんはカームダウンボックスについて、「こんな工夫があったらいい」「こんなモノがあったらいい」とたくさんのアイデアを教えてくれました。そしてそのアイデアどれにも共通していることが、“自分のペースを取り戻せる場所”であること。これは私たちにはなかった視点で、一人が好きというわけではなく、学校に行きたくないわけでもなく、ただたまに学校で落ち着く場所がほしい、そう願った鬼頭さんだからこそ思いつく考え方でした。

 

そんな考えを聞いて新たなカームダウンボックスの可能性を感じ、私たちは鬼頭さんの考える理想のカームダウンボックスを一緒に作らせてもらうことにしました。

 

 

ここからは、鬼頭さんの探究学習の発表内容とそこでお話しされた自分のペースを取り戻すためのアイデアを紹介します。

 

タイトルは、「不登校について」。

このテーマにした理由はいじめが要因ではない不登校があることを知ってもらいたかったからです。

文化祭で取ったアンケート(左下の写真参照)を見てみると、人と関わらなかったり、関わることが嫌いで学校が嫌い(だった、楽しみじゃない)というわけではなく、全体的に散らばっており色々な生徒さんがいることがわかります。

 

「授業中も気になるけれど、休み時間が特に賑やかになり1人になれないことが大変だった」と振り返る鬼頭さん。

一方で、「でも、今は学校が好きで通えるようになっている。別にずっと1人が好きってわけでもない」ともお話しされています。

 

自身の経験を振り返り、学校内に1人になれるスペースを作れば不登校が減るのではないかと考え、そしてその1人になれるスペースとしてカームダウンボックスが必要なのではないかと考えられました。

そして鬼頭さんがこのスペースに求めているのが、“自分のペースを取り戻せる場所”になることです。

さらにご自身の経験から自分のペースを取り戻すためには、何か気をそらしたり、一定の作業をすることが効果的と考えた鬼頭さん。

その考えをもとに、本から得た事例や校内アンケートの意見、そして鬼頭さんオリジナルのアイデアがこちらです。

 

自分のペースを取り戻すためのアイデア

・ティッシュを箱から出す
・気泡緩衝材を1つずつ潰す
・砂時計を見る
・低反発スクイーズを使う
・プッシュポップを使う

中でもプッシュポップは鬼頭さんのオリジナルのアイデアで、ティッシュや気泡緩衝材と比べると表面裏面と繰り返し使えるため落ち着くまで使い続けることができ、とてもいいアイデアだと思います。実際に美術館などでも気持ちを落ち着かせるための貸出グッズとして用意されているようです。

 

鬼頭さんの経験から考えるクラスの雰囲気が要因の不登校を減らす方法は、“1人になれるスペース”を作り、スペース内で“自分のペースを取り戻す”こと。それを叶える方法として、カームダウンボックスとプッシュポップが効果的ではないかと締めくくられています。

最後に、今回紹介した探求学習の発表会は3月14日に行われました。実際のカームダウンボックスも合わせてご紹介いただき、当日来場されていた生徒さんや先生、保護者の方などたくさんの方にご覧いただきました。

「私のような不登校の子のことを知ってもらい、より(学校生活が)過ごしやすくなると嬉しい」、そう鬼頭さんは言います。

 

学校生活をどのように過ごすかは人それぞれです。休み時間、友達と話をして楽しみたい人もいれば、1人で落ち着きたい人、その時の気分によって変わる人もいます。様々な生徒が通う学校において、それぞれの過ごし方を尊重するための1つとしてこのボックスがあることで快適な学校生活につながるかもしれません。

 

 

(カンコー学生工学研究所 麻田)
この記事に関するお問合せはこちら。

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