学生工学研究所は「誰一人取り残さない制服・体操服づくり」を目指しています。まだ可視化されていない子どもたちの悩みを調べていくうちに感覚過敏という言葉に出会い、これまで感覚過敏の子どもたちが快適な学校生活を送れるよう研究開発を進めてきました。
そうした感覚過敏に関する取り組みのうちの1つ、カームダウンボックスについて紹介します。
これまで私たちは学校で児童・生徒さんや先生方に安心してご利用いただけるよう、カームダウンボックスの研究開発を進めてきました。そのための運用のヒントやより落ち着ける空間にするためのアイデアを数多くいただきましたが、「実際にボックスを見て体験いただく機会が少ない」という課題もありました。
そこで、写真だけでは伝わりにくい音や光の変化、ボックス内の広さなどを直接体験していただくために、夏休みに東京都中央区のカンコー学生服東京ショールームでイベントを開催しました。今回は、その当日の様子を紹介します。
カームダウンボックスのイベント
イベント当日は「展示体験会」と「特別講演会」を同時に開催しました。
管理職や特別支援学級、養護教諭の先生など、現地には10名の方に来場いただき、オンラインでも12名の方々に参加いただきました。
イベント① 展示体験会
展示体験会ではパーテーションやカームダウンボックスなど5種類を展示しました。
- 主な展示内容
・学校で活用しやすいパーテーションやカームダウンボックス(写真上段5種類)
・生徒さんが考えた、ボックスをより安心して使用するためのグッズ(写真下段左)
・学校生活で活用できるグッズ(写真下段右)
・学校での導入事例のご紹介
参加者のみなさまには実際にボックスの中に入って、児童・生徒さんが使用した際の光や音の変化を体験していただきました。
置き場所の検討や実際に使用された際の違いなど、ご自身の学校に導入した場合を具体的に想定されており、「校内にもこうしたスペースが必要だ」と感じてくださっていることが伺えました。
実際の学校さまで使用された事例は以前の記事で紹介しておりますので、よろしければ記事下部の関連リンクよりご覧ください。
イベント② 特別講演会
同日開催しました特別講演会は、オンライン配信も同時に行い、都内だけでなく遠方の先生方にも多数ご参加いただきました。
講師には感覚過敏研究所の加藤路瑛(かとう じえい)所長をお招きしました。

感覚過敏研究所 所長/株式会社クリスタルロード代表取締役
自身の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、13歳の時に感覚過敏研究所を立ち上げる。商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。
日本初のカームダウンスペース・カームダウンボックス専門ストアを運営し、商品提供から設置環境の調整、運用面のサポートまで幅広く取り組む。
書籍執筆や講演、学会発表など多方面で活躍され、近年では、空港や大阪・関西万博に設置されたカームダウンルームの監修、教育委員会や特別支援学校での講演も行っている。
著書
・『カビンくんとドンマちゃん』 (ワニブックス出版)
・『感覚過敏の僕が感じる世界』 (日本実業出版)
- 講演でお話しいただいた内容(一部)
・「わがまま」ではなく、目に見えにくい「つらさ」
感覚過敏は病気ではなく光や音などの刺激を過敏に感じてしまう状態。周囲に気づかれにくく本人も言語化しにくいため、強い疲労感や不登校の原因にもなっています。
・がんばるべきは「子ども」ではなく「周りの環境」
「子どもが我慢して慣れる」のではなく、学校や社会全体が合理的配慮を行い「環境(バリア)を整えて負担を減らす」という考え方を重要視されています。
・身近なグッズや工夫で負担を軽減
文字が見やすくなるカラーノートやサングラス、イヤーマフの活用から給食の工夫まで、子どもの困りごとに合わせた具体的な支援策や便利なツールを紹介いただきました。
・ホッと一息つける「避難スペース」の広がり
刺激から離れて心を落ち着かせる「カームダウンスペース」は、空港やスポーツスタジアム、公共施設など社会全体へ広がっています。
・スペースや支援ツールを用意するだけでなく「一緒に考える対話」が大切
単に場所やツールを用意するだけでなく、子どもの気持ちや声に耳を傾けながら、一緒に試行錯誤していく対話の姿勢が何より大切だと締めくくられました。
参加された先生方からは実際に今担当されている児童・生徒さんを想定した具体的な質問が寄せられ、大変有意義な時間となりました。
講演いただいた加藤所長、ご参加いただいた先生方、ありがとうございました。
