学生工学研究所ではダイバーシティ・インクルーシブをテーマとして制服・体操服の研究に取り組んでいます。その一環として、福祉と制服と学生をアートでつなぐ「エイブルアート※1・ユニフォーム」プロジェクトを展開しています。
※1 エイブルアートとは、障がい者芸術を捉え直す運動のこと。エイブルとは可能性という意味で、アートの可能性や人間の可能性を再発見し、誰もが豊かに生きる社会を目指す。

2025年8月23日~24日、第30回うらじゃ2025※2が開催されました。この祭りで、うらじゃ振興会公認のインクルーシブ踊り連「一期一会~輪舞温羅」が新たに発足しました。キッズハウスいちご※3を中心とした、児童発達支援施設に通う未就学~高校生が、障がいの有無や年齢、経験を問わず、誰もが一緒に楽しみながら踊れることを目指した連です。今回、私たち学生工学研究所で、この踊り連の衣装製作をご依頼いただき、企画から縫製まで携わりましたので紹介します。
※2 うらじゃとは、岡山県に古くから伝わる「吉備津彦命(きびつひこのみこと)=桃太郎のモデルとされる」と「温羅(うら)=鬼」との
戦いを描いた桃太郎伝説から生まれ1994年から開催されている岡山の歴史ある祭り。(https://uraja.jp/)
※3 公式HP:http://strawberry-okayama.jp/sp/ichigo.php
衣装のデザインや設計の検討は1月から始まりました。話し合いを重ね、踊り子として参加される車椅子利用者の方にも丁寧にヒアリングを行い、着用試験を経てデザインを決定していきました。

衣装は、お祭りらしい華やかさと視認性を備え、誰が着ても似合うユニセックスデザインを目指しました。法被らしさを出すため和調の生地を採用し、前身頃にはカーブを入れて多様性を認め合う柔らかい雰囲気を表現しています。さらに、サイズ規格は、児童用・成人男女用の3タイプを設定。着丈や身幅を調整し、袖口にはマジックテープ式リストバンドを取り付けました。踊りやすさと着やすさを重視し、車椅子利用者の方にも安心して着ていただけるよう工夫しています。
縫製にあたっては、一針一針に「踊り手の皆さんが最高に輝けますように」という願いを込め、細部まで丁寧に仕上げました。衣装は踊り子を引き立て、その輝きを支える存在であることを意識しています。
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また、岡山市の多機能型事業所「ありがとうファーム」※4さまのアートを取り入れ、りょうさんの作品《幾何学(仮)》をモチーフに採用。作品に使われている色を全体デザインに活かし、視認性の高い黄色と、その補色となる青を身頃に配置してコントラストを強調しています。襟や袖に用いたアートを引き立てるため、無地部分を大きく取り、上品さと華やかさを両立させています。あわせて、アートをプリントした生地で帯を作成し、鉢巻・腰帯・襷としても使える長さとしています。

迎えたうらじゃ当日、「一期一会~輪舞温羅」の皆さんは、世代も背景も異なる仲間とともに、笑顔で楽しそうに演舞されていました。車椅子で参加する踊り子も自然に輪に溶け込み、観客からは大きな拍手が送られていました。衣装がその一部となり、踊りの輪に彩りを添えることができたことを、私たちも大変うれしく感じました。

参加された児童や保護者の皆さまからのコメント(抜粋)
・丈が短くて、車椅子の利用者にはとてもありがたく、軽くてデザインが遠めからも目立って良かったです。
・衣装着るのが簡単でしっかりしていたのでよかったと思います。また来年あの衣装を来てうらじゃ踊れるのを楽しみにしています!
・みんなと同じ衣装を着て踊る息子の姿を見ることができ、いい時間でした!
「一期一会~輪舞温羅」のうらじゃ衣装づくりは、インクルーシブな踊り連の理念を形にする貴重な機会となりました。今回の取り組みを通じて、アートは飾るだけでなく、身にまとうことで場をさらに華やかにし、着る人も見る人も気持ちを明るくさせる力を持つことを改めて感じました。学生工学研究所では今後も衣服を通じて共生社会の実現に向けた研究に取り組んでまいります。
そして、「一期一会~輪舞温羅」の皆さんがこれからも多くの舞台で輝き、踊りを通じて多様性の輪を広げていかれることを心より期待しています。
「一期一会~輪舞温羅」の皆さんの演舞動画は下記リンクよりご覧いただけます。
URL:https://youtu.be/7HWdB_2stiM
(学生工学研究所 廣畑)
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