ダイバーシティ&インクルージョン※1という考え方が広がり始めてから、しばらく時間が経ちました。
スクールユニフォームは、さまざまな体型や価値観を持った子どもたちが着用する服であり、私たちカンコー学生工学研究所もこの考え方を大切にしています。
その上で、さらに子どもたちを見つめていくと、子どもたち一人ひとりの中にも豊かな多様性があることに気づかされます。
今回は、すべての子どもたちを包摂しつつ、個の中にある多様性にも寄り添いたい、そんな思いで始まった企画について紹介していきます。
※1 ダイバーシティ&インクルージョンとは、「多様性」を意味するダイバーシティと「包摂」を意味するインクルージョンを合わせた語で、性別や年齢、国籍、人種、職歴、障害の有無など、目に見える違い/見えない違いが受け入れられ、その個々を活かし合う考え方。
「自分らしさ」の時代を生きる子どもたち。
「自分らしさ」という言葉を、最近ではよく耳にするようになってきました。
カンコーではダイバーシティ&インクルージョンの考え方のもと、アレルギーや障がいなどに配慮したユニフォームづくりや提案も行ってきていますが、そういった特性も子どもの中にある多様性のひとつであり、その子らしさを構成していくものだと、私たちは考えています。
実際に、現代社会で生きる子どもたちも「人との違い」が「自分らしさ」につながると認識しているようです。
資料:カンコー学生工学研究所 2022年8月 全国の高校生男女500人を対象にインターネット調査を実施
しかし一方で「人との違いに不安を感じる」「皆と同じという安心感が欲しい」と考える子どもが半数以上いることも明らかになりました。
こういった調査から、自分の特性や個性といった「人との違い」は「自分らしさにつながる」と思いつつ、それでも「みんなと同じでいたい」とも思う、そんな矛盾のようなものを抱えている子どもたちの実態が浮かび上がってきたのです。
しかし、このふたつの思いは、本当に矛盾するものなのでしょうか。
「私たち」というつながりの中にいる安心感も、多様な「私」を表現する充実感も、両方を満たすことができる NEXT SCHOOL LIFE を目指したい。
私たちはそんな思いを込め、この指標に基づいたアクションを<USME>(アスミー)―「私たち」も「私」も満たす服― と名づけることにしました。
<USME>―「私たち」も「私」も満たす服―
第一弾のUSMEでは近年注目されている「ジェンダー」をテーマに、「正装=ブレザー+スラックス」といったような基本の着用スタイルをあえて設けないことで、マイノリティを含めた「私たち」が、安心して「私」を表現できる環境を目指します。
※コンセプトデザインのため、実際の商品ではありません。
それでは、デザインのポイントを紹介します。
「体型をインクルーシブするジェンダーフリーなデザイン」
性別に関わらず誰もが着用することで、より「私たち」というつながりを感じてほしい。
そういった意味を込め、ゆったりしたシルエットで全てのアイテムを男女兼用としています。また、新しい試みとして丈感などにこだわったキュロットを取り入れました。
「どんなシーンでも自由な組み合わせを実現」
自分のココロやカラダの声に合わせて自由に「私」を表現してほしい。
そんな思いから、一般的に制服に用いられているチェック柄を体操服にプリント加工し、制服と体操服をトータルコーディネートすることで組み合わせの幅を広げました。
これからの制服のあり方を模索する。
ここまで、「ジェンダー」をテーマとしたUSMEのコンセプトデザイン第一弾をご紹介してきました。しかし、多様な子どもたちが集団で着るスクールユニフォームにおいて、取り組むべきテーマや可視化されていない課題は、まだまだたくさんあります。
そしてやはり一番大切にしたいのは、制服の着用者である子どもたちが、USMEに対して何を感じるのかということ。
ありがたいことに、出来上がったものを見た子どもたちからはすでに「着てみたい」「わくわくする」といった声が挙がっていますが、今後は子どもたちとより一層近い距離で、その声を聞いていきたいと考えています。
USMEのアクションはまだ始まったばかりです。
私たちは学生服メーカーだからこそ、ダイバーシティと真剣に向き合い続け、これからの時代に求められる新しいスクールユニフォームのあり方を探っていきます。
(カンコー学生工学研究所 澤埜)
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