2017.08.01 先生向けコラム 地域に学校がある意義を見つめ直す

「太宰治学習」や津軽三味線部など、地域に根ざしたキャリア教育を展開している青森県立金木高等学校。
その取り組みについて藤澤校長にお話をうかがいました。



青森県立金木高等学校 藤澤  重信校長

青森県西北地域は産業に乏しいためか、本校を卒業した子どもたちの多くが県外へ出て行ってしまいます。金木町に残るのは全体の2割以下。また地元で就職したとしても、離職率が高いことが課題になっています。金木町は太宰治の生誕地であるほか、津軽三味線発祥の地であるなど、誇るべき魅力を持つ町です。しかし、残念ながら生徒たちにあまりその魅力が理解されていない。自分の郷土を誇りに思えるような地域の財産を知らないまま、県外に出て行ってしまうのは実にもったいないことだと思います。

そのため本校では、学校教育の中で生徒たちが地域の魅力に触れられるような場を設けています。そのひとつが「太宰治学習」です。毎年芦野公園で行われる太宰治生誕祭には、昨年度は金木太宰会会長による事前授業を受けた上で全校生徒が参加、今年度は青森県近代文学館室長による講演を行いました。また、太宰作品読書感想文入選作を朗読します。冬休みの宿題としても、太宰作品をテーマにした金高太宰カルタを制作させています。

また、金木の子どもであれば一度は津軽三味線に触れてほしいという思いから、平成13年に三味線部を発足。本校の卒業生が外部講師として指導に当たっています。いずれは全校生徒に、音楽の授業で邦楽の学びとして津軽三味線を体験させられるようにしたいと思います。更に、平成29年度からは地元新聞社とタイアップし、NIE(新聞を教材として活用すること)を導入しました。地域の時事問題に触れさせることで、生徒に地域への興味関心を抱かせることが狙いです。そして社会人基礎力が身につけばと思っています。

こういった地域の財産を生かした教育活動に取り組むことが、本校独自の魅力とPRにつながると考えます。三味線部の人気と知名度は高く、東北新幹線の開業イベントや「走れメロスマラソン」といった県内の様々な催し物に招かれ演奏しています。そうした活動の様子を収めたPRムービーを作成。中学生向けの説明会などで活用しています。また、金高太宰カルタを地元の駅などに展示するなどして、地域に発信していきたいと考えています。自分の郷土について知ることは基礎的で大切な学びですから、今後も本校でしか学べない地域の財産を生かした教育を学校の魅力として発信していきたいですね。 (取材/西中学)



◎太宰治学習 「金高太宰カルタ」

金木町出身の作家太宰治について学ぶ、「太宰治学習」。ゆかりの場所、建造物、文学碑などを見学したり、作品や資料を調べ、太宰文学の背景にあるものを考察します。昨年度は冬休みの課題として、生徒たちが「金高(きんこう)太宰カルタ」に取り組みました。生徒それぞれが、割り当てられた頭文字に対して太宰の作品の文章から読み札を作成し、文章に合ったイラストや写真で絵札を表現しています。



◎三味線部

津軽三味線発祥の地である金木町にちなんで、平成13年に発足した三味線部。毎年5月に開催される津軽三味線全日本金木大会を目標に練習に励んでおり、地域のイベントにも引っ張りだこの状態です。毎年8月に開催される地域の祭り 「Bon de フェスタ」や、北海道新幹線の開業イベントなどにも招待されています。


Bon de フェスタでの演奏の様子


新幹線開業イベントでの演奏の様子


学校での練習の様子

生徒さんからのコメント
 

毎年5月に開かれる全国大会に向けて日々練習に励んでいます。地域のイベントなどでもよく演奏させていただきますが、地域の方の応援がとても嬉しく思っています。演奏をお聴きになる際には、津軽三味線特有のバチの持ち方にもぜひ注目してみてください。  



NPO法人かなぎ元気倶楽部 理事
キャリア教育コーディネーター 斎藤 真紀子さんからのコメント   

外部講師による指導は、生徒たちにとって非常に良い刺激を得られるもの。交流の輪が広がり、視野と活動の場が広がります。そうして地元の魅力を学んだり、地域で頑張っている熱意ある人々と出会ったりする機会は、なるべく若い内に与えてあげた方がいい。また外部講師の側からしても、子どもたちに教えることは自分の知識を継承できるなど、喜びの多いものです。 PTA会長として学校に関わってきましたが、学校と地域が連携した教育活動が全ての保護者に浸透しているとはまだ言えません。今後は更に地域や保護者を巻き込んだ活動になるようキャリア教育コーディネーターとして母校をサポートしていきたいです。そして学校を盛り上げることで、地域全体も元気にできればと思いますね。



「カンコーは、子どもたちの夢と学びを応援しています」

※本稿は、(一社)カンコー教育ソリューション研究協議会からの業務委託により、菅公学生服株式会社がお届けする学校現場のお悩み解決を目的とした教育関係者様向け情報誌 『カンコータイムズ』 を基に加筆した記事です。

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